第8話 陰謀論

2037年12月23日 15時24分頃 とあるSNSの動画にて:


「とある研究者は、殺されたんです!病死ではなく、暗殺です。ゼロ・トリガーと政府を結び付けるような核心的な情報を、公表しようとしたがために、秘密裏に殺されたんです。この真実が見過ごされるわけにはいきません。みんなで一緒に、とある研究者の真相究明を、政府に向けて訴えていきましょう!」



2037年12月28日 13時37分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「ゼロ・トリガーに関する情報を、政府が認めたサイト以外から手に入れようとすると、アクセス不可になるから気をつけろよ」

「え?じゃあ、自由に情報収集することすらできないってこと?」

「そうだ。だからって、セキュリティ上の抜け穴を見つけて、政府がアクセス許可を出してないサイトを閲覧しようだなんて思うなよ?」

「そんなことしないってば。それよりも、妙だなって感じたことがあってさ」

「ん、何かあったか?」

「政府のアクセス許可が出ているサイトの大半が、ゼロ・トリガーに関する陰謀論を紹介しているんだけど、何かおかしいと思わない?」

「なるほど、分かったぞ。徹底的に情報統制する方が、政府にとっては楽な筈なのに、なぜ、陰謀論は閲覧できるようにしているのかってことだろ?」

「うん。政府が、陰謀論を見られるような環境にしているのには、必ず、狙いがあるんだ。でも僕らは、それに気づけていない」



2038年1月4日 16時29分頃 とある人間の会見映像にて:


「国民からの信頼で成り立つ政府が、意図的に情報を遮断するのは、良いことではない。賢明な政府となり、広く開かれた通信環境を整えることで、国民が自由に情報を入手する機会を、制限なしに提供するべきだ」



2038年1月7日 21時53分頃 とあるメディアのニュースにて:


「日に日に増えていく、ゼロ・トリガーの陰謀論。誰がどんな目的で、広めているのでしょうか。今日は、心理面と社会面から深掘りしていきたいと思います」



2038年1月10日 09時16分頃 とある人間の会見映像にて:


「存在すると断定できないものに、人員や予算を割くことはできない。大事なのは、国民の期待に応えること。そのためにも、まずは、経済対策という大きな課題に対して、真正面から取り組んでいく」

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