第3話 検証

2037年9月13日 10時14分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「ということで、あなた方、情報研究チームの皆さんには、国内で広まっている真偽不明の情報の、信ぴょう性を判断してもらいたいわけです」

「やはり、ゼロ・トリガー関連なのですか?」

「はい、お察しの通り。ですが、安心してください。検証する情報内容は、全部合わせても、200種類余り。そのうえ、ここでは、配布したお手元の資料の他、特別な環境の下、インターネットも使えるので、閲覧制限にも引っ掛かりません」

「分かりました……。私たちの方で引き受けましょう」

「そうして頂けると助かります。何しろ、こちらは他のことで忙しいもので」



2037年9月14日 12時52分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「それで、どうしたって?」

「SNSに全く入れないんだよ。強制ログアウトになったらしくて……」

「ふーん、ゼロ・トリガーのこと、何か投稿した?」

「したよ。でも、問題のあるような文章を公開したわけじゃないのに」

「何を書いたんだ?」

「SNSには、『政府と宇宙人が裏で繋がっているかも』とだけ」



2037年9月18日 21時37分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「こんな夜に電話なんて、君らしくないね」

「はい、とある研究者が、ゼロ・トリガーの存在理由を示す、新しい証拠を近く発表するそうですから」

「まさか、そんな理由だけで電話してきたわけではないだろう?」

「もちろんです。この研究者のことは、よく知っていると思っていましたから」

「それは、どういう意味なんだい?」

「ゼロ・トリガーという言葉を世界に広めた研究者と、ゼロ・トリガーの存在理由を示す新しい証拠を発表すると宣言した研究者。同じ人物なはずなのに、外見や、経歴、研究内容などが、全部、微妙に違うんですよ」

「なるほどね。どちらかが本物を騙る偽物の研究者というわけだ」



2037年9月19日 13時03分頃 とあるメディアのニュースにて:


「とある研究者が、ゼロ・トリガーに関する誤った情報が氾濫している、今の社会の現状について、次のような声明を発表しました」


「ゼロ・トリガーという重要な問題において、間違った情報が共有されることは、社会全体にとって望ましくない。勝手な推測で人々が意見することのないよう、私からも強くお願いしていく」



2037年9月20日 02時40分頃 とある媒体に録音された人間の独り言にて:


「うーむ……。どう見ても、こっちの方が本物の研究者っぽいな。でも、こっちが本物なんだとしたら、なんで最初は、別のヤツを使ったんだ?まさか、そんなわけないよな。どっかの国がわざわざ用意した別人なんてことは……」

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