第2話 広まる情報

2037年8月28日 12時16分頃 とあるSNSの動画にて:


「とある研究者の一言から広まった謎の言葉、ゼロ・トリガー。その正体が、政府の進める極秘実験計画であることが分かったんです。どうして、皆さんに、この情報をお伝えすることが出来たか。実は、信頼できる情報筋から身元を明かさないことを条件に、こっそり教えてもらいました」



2037年9月2日 16時23分頃 とある人間の会見映像にて:


「この度、私たち政府は、ゼロ・トリガーという言葉を対象に、インターネットでの全面的な閲覧制限を導入することを決定しました。理由は、誤情報による社会的混乱を抑えるためです。どうか、ご理解とご協力を深くお願いしたい」



2037年9月3日 14時01分頃 とあるメディアのラジオニュースにて:


「続きましては、最近話題の、あの言葉に関するものです。つい先日、政府は、社会的な混乱の回避を目的とした、閲覧制限の実施を発表いたしました。対象はもちろん、ゼロ・トリガー。具体的な実施期間の長さは、現時点で明らかにはなっていませんが、しばらく続くとみて間違いないでしょう」



2037年9月3日 18時35分頃 とある人間同士の音声通話にて:


「おいおい、聞いたかよ」

「なんだよ。今、俺は忙しいんだよ」

「『ゼロ・トリガー』って言葉を検索しようとすると、閲覧制限になるらしいぞ」

「はあ?」

「ちょっと、試してみようぜ」

「まあいいけど。1回だけだからな……。ってマジじゃん!」

「だろ~?これさ~、政府が何か隠しているんじゃないかって、俺は考えてるんだけど、ニサはどう思う?」



2037年9月5日 10時47分頃 とある媒体に録音された人間の話にて:


「私はね、ゼロ・トリガーなんてないと思っていますから。いいですか、皆さん。誰かの考えた、くだらない陰謀論になんか付き合っちゃだめです。根拠のない情報をいちいち信じていたら、つまらない人間になりますよ。不確かな情報に惑わされず、信頼できる情報源から情報を入手することを、常に心掛けてください」



2037年9月8日 15時29分頃 とある媒体に録音された人間同士の会話にて:


「ギュオン。あの話はどうなった?」

「あの話?ああ、ゼロ・トリガーの件なら、心配には及びません」

「え、それはどういう……」

「いくつかのツテを使い、誤情報を流しておいたので」

「おい、そこまでお願いした覚えはないぞ!勝手なことをしてもらっちゃ」

「ユロムさん、こちらにいたのですね。時間ですので移動を」

「クッ……。ギュオン、後日、きっちりと説明してもらうからな!」

「分かっていますとも、ユロム先生」

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