第19話 五度目の告白

 加奈と交際できないまま、高校三年生の一月を迎える。


 堅実な選択しておけば、異性と交際できた。それにもかかわらず、浮気率99パーセントの女性を追い続けてしまった。愚かな考えをしてしまったために、たくさんのものを失うこととなった。


 恵美は失恋のショックを乗り越え、新しい道を歩もうとする。女心は変わりやすいといわれるけど、実際にそうなのかなと思った。


 読書をしていると、想い人に声をかけられる。四度告白して、すべてで撃沈した女性である。


 二人きりで会うのは久しぶり。遊園地でいい雰囲気になってからは、どういうわけか顔を合わせるタイミングは訪れなかった。運命の神様によって、故意に関係発展を阻まれているかのように感じられた。


「光さん、こんにちは」


 加奈は気苦労がたたったのか、顔はどことなくやつれていた。元気な姿を見せていた女性の面影は消えていた。


「遊園地のときは本当にありがとう。最高の思い出になったよ」


「こちらこそありがとう。本当に楽しかった」


「隣に座ってもいい?」


「いいけど・・・・・・」


 加奈は隣に座ったあとに、光の太腿の上に手をのせてきた。


「加奈さん・・・・・・」


「わがままにつきあわせてごめんね。光さんも同じようにしていいよ」


 もじもじとしていると、失望、怒りの混じった声をかけられた。


「本気で好きになった女の子から、触ってもいいといわれているんだよ。絶好のチャンスを逃すのは、男としてあり得ないでしょう。もしかしてだけど、私のことを嫌いになった?」


「そんなことはないよ・・・・・・」


「それなら・・・・・・」


 光はおそるおそる、加奈の太腿に触った。体毛は生えていないからか、スベスベとしていた。


「光さんのおかげで、ようやく元気を取り戻せた」


「加奈さん・・・・・・」


「光さんと全く会えなくなってから、嫌われたのかなと思ってしまった」


 光だけでなく、加奈も同じように考えていた。


「避けているわけではなかったけど、タイミングがまったく合わなかった」


「そっか。よかった・・・・・・」


 加奈は深い息を吐く。


「最初に告白されたときは、浮気率は100パーセントだと思っていた。光君よりも大好きな、本命の男子生徒がいた。私はその男性のことだけを、頭の中で考え続けていた」


「99パーセントといったのはどうしてなの?」


「100パーセントといったら、かわいそうだと思ったの。1パーセントだとしても、

希望を持ってもらいたい」


 100パーセントといわれていても、加奈を追い続けようとしていた。本気で好きになった女性を、諦めたくはなかった。


「二回目に告白されたときは、98パーセントくらい。一回目と比べると、確率はちょっとだけ下がっていた」


 99パーセントは100回に1回、98パーセントは50回に1回である。成功確率は上がっていても、大差はないように感じられた。


「三回目に告白されたときは、80パーセントくらいだよ。心は傾いていたけど、他の男性を好きになると思っていた」


 三回目の告白時点で、80パーセントまで下がっていた。99パーセント時代から比べると、好感度は高くなっていた。


「18年間生きてきて、こんなに必要とされたことはなかったもの。そのことは、予想していたよりも大きかったみたいだね」


 三回の告白を、ストーカーとみなすものもいる。紙一重の勝負ではあったものの、勝利をおさめられた。


「遊園地で遊んでいたときに、胸を思いっきり揉まれた。不可抗力とはいっても、ちょっとだけ嬉しいと思っていたの」


「加奈さん・・・・・・」


「遊園地に誘った時点で、心変わりしていたんだと思う。自分でも気づかないうちに、心は大きく揺れていた」


 加奈は頬を染めた状態で、こちらに視線を向けた。


「五回目の告白をしてください」


 光は意を決し、五度目の告白を行った。


「加奈さんのことが好きです。交際していただけないでしょうか?」


 加奈の頬は、夕日さながらに赤くなった。


「はい。よろしくお願いします」


 敗北率99パーセントから、交際にこぎつけることができた。恋愛についても、信じる者は救われることを学んだ。


「光さん、私の太腿の触り心地はいい?」


「うん。すっごくいいよ」


「心さんよりは劣っているかもしれないけど、私なりに女性を磨いてきた。ありのままを受け入れてほしい」


 心は美人だったけど、人工的な要素を含んでいた。人間にもかかわらず、AIを混ぜているかのようだった。


 加奈と親しくしていると、お嬢様がこちらにやってくる。騒動以降は、関係を持つことはなかった。


「仲の睦まじさからして、二人は交際をスタートさせたみたいですね」


 お嬢様は目頭などをいじった。


「結婚相手を決められていなかったら、恋愛対決に参加してみたかったです。お嬢様として生まれてしまい、本当に残念です」


 18歳なのに、皮膚はとってもやつれていた。望まぬ結婚生活は、いろいろと気苦労が多いようだ。


「人生をやり直せるのであれば・・・・・・」


 心は続きをいわずに、二人のところからいなくなった。


「心さんは、感情が壊れてしまっているね」


「うん。すっごくかわいそう」


「私たちにできるのは、そっと見守ってあげるだけ。余計なことを口走れば、余計に傷つけることになる」


「そうだね。そっとしてあげよう」


 心のようなお金持ちには、本当に支えてくれる人が必要。これからの人生で、そういう人と出会えることを心から願いたい。

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