第13話 ボディガードからの手紙

 玄関前で、3人の元ボディガードを発見。2メートル近いとあって、立っているだけで威圧感ありありだった。


 素通りしようとしていると、進路をふさがれてしまった。光は恐怖からか、雁字搦めになった。


「ちょっとだけお話を・・・・・・」


 光の頭の中に、監禁の2文字が頭をよぎった。数時間後、どこに閉じ込められているのか。


 光の心境を読み取ったのか、ボディガードは優しい言葉をかけてきた。


「光さんに危害を加えようとしているわけではありません。お嬢様の話を聞いていただきたいです」


「心さんの話?」


 一人の元ボディガードは眼鏡をはずす。目はとってもいかつく、暴力団に所属しているかのようだった。


「お嬢様は結婚されてから、人間の心を失われてしまいました。あんなに明るかった

姿は、どこにもありません」


 結婚する前は陽気だったのに、結婚してからはふさぎ込むようになった。彼女にとっては、あまりに重すぎた。


「強制的な結婚は、よほどショックだったのでしょう。政略的な結婚とはいえ、本人の意向は完全に無視されていました」


 元ボディガードは、黒カバンの中から手紙を取り出す。


「お嬢様が最後に書かれた手紙です。お読みいただけないでしょうか?」


 光は手紙をゆっくりと開く。


「拝啓


 お元気に過ごしていますか


 光さんが手紙を開いているときには、すでに結婚していると思います。


 結婚後には男子接近禁止令を守る必要があります。


 光さんに対して、声をかけることすら許されません。


 本当に好きな異性に、声すらかけられないのはつらいです。


 

 学食を一度でいいから一緒に食べてみたかったです。


 庶民はどんなものを食べているのか、強い興味を持っていました。

 

 一円玉、五円玉、十円玉、五十円玉、百円玉、五百円玉、千円札、五千円札も見てみたかったです。小銭を知ることによって、自分を変えるきっかけになったと思います。

 

セクハラまがいのことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。


 期限は迫っていたため、ああするしかありませんでした。


 光さんに傷を負わせていなければ幸いです。

 


 10年後、20年後になっても、光さんのことだけを想い続けます。


 子供を誕生させたとしても、心は変わることはありません。


 最初で最後の好きな人に、楽しい人生が待ち受けていますように。

                                   敬具」


 心の手紙を読んで、胸に痛みが走る。同時に本気で好きになった人と結ばれないことに対する、つらさをしみじみと感じた。


「以前の優しさを取り戻してほしいですけど、私たちは関わることは許されません。お嬢様のこれからをサポートできないのはつらいです」


 元ボディガードの元に、手を出した女の子が近づいてきた。


「あんたたちに聞きたいことがある。あの子はどうして、あんなひねくれてしまったの?」


「お嬢様の心が壊れてしまったからです。私たちからは、それ以上を申し上げることはできません」


 女子生徒はいらだった様子で、光の手紙を奪い取る。


 手紙の内容を読んでいくうちに、女子生徒の怒りは緩和されていった。


「心さんは人一倍、つらい思いをしていたみたいだね。頬を叩かなければよかった」


 女子生徒は手紙を返す。勢い余っていたために、端は少しだけ破れてしまっていた。


 心は完全にチャンスを失ったけど、光にはチャンスは残されている。すべての時間を使って、加奈に想いをぶつけようと思う。どんな結果になったとしても、自分を納得させたいという意思を固めた。

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