第10話 別の女子生徒から告白される

 ラブレターを受け取ったので、屋上にやってきた。自分みたいな男を、好きになる女性もいるんだという気持ちは強かった。


 屋上に足を運ぶと、一人の女性が待っていた。


「光さん、お待ちしていました」


 伊藤恵美は普段とは異なり、ばっちりとしたメイクを施している。今回の告白に、気合を入れているのが伝わってきた。


 彼女との接点は文化祭。二人でペアになって、照明道具などを完成させた。そのときに、彼女にとって特別な出来事があったと思われる。

 

 恵美は一直線に思いを伝えてきた。


「光さんのことが大好きです。お付き合いしていただけないでしょうか?」


 返事をするときに、浮気率99パーセントが脳裏をよぎった。恵美と交際したとしても、99パーセントの確率で浮気をする。


「ごめんなさい」


 恵美は負けたにもかかわらず、すがすがしい表情をしていた。


「私の思いを聞いてくれてありがとう。最初から失敗するのは分かっていたから、大きなショックはないよ」


 ショックはないといいながら、ハンカチで目頭をぬぐう仕草を見せた。失敗するとわかっていても、断られたときはダメージを受けるらしい。


「加奈さんを追い続けても、99パーセントは浮気されるんだよ。私と一緒になったほうが、堅実な選択だと思う」


「恵美さんと交際しても、愛情を捧げるのは難しい。好きになるまでは、交際しないほうがいいと思う」


 恵美は小さく頷いた。


「馬鹿正直なところは、とっても素敵だね。加奈さんと結ばれるとは思えないけど、最後までやってみるのもいいと思う。諦めなければ、奇跡が起こるかもしれないよ」


 恵美は下をペロッと出した。


「加奈さんのことを諦めたら、私のところにくるといいよ。とはいっても、他の異性と交際をスタートさせているかもしれないけど・・・・・・」


 特定の異性を追い続けるのは稀。多くの人間は気持ちを切り替え、前に進んでいくことを選択する。ベストとはいえないけど、ベターなやり方で生きている。

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