第6話 好きな女性の前で緊張してしまいました
図書室で本を読んでいると、大好きな女性を二つの目でとらえる。
距離を縮めたいところだけど、ぐっと我慢することにした。思いを爆発させたら、99パーセントの浮気率は、100パーセントにアップ。100回交際すれば、100回裏切られる展開は地獄絵図さながらだ。
大好きな女性は、目の前までやってくる。あちら側からやってくるのは、頭の片隅になかった。
「光さん、本を読んでいたんですね」
告白を断ったのに、堂々としている。二人の間には、はっきりとした温度差があるのを感じた。
好きな人を目の前にしているからか、うまく話すことはできなかった。
「きゃ、きゃなしゃん・・・・・・」
加奈はおかしかったのか、口元に手を当てていた。
「同級生の傍にいるだけで、そこまで緊張するのはおかしいよ」
好きな異性を目の前にして、心拍数はうなぎのぼり。最高血圧は170、最低血圧は100を突破していると思われる。
「光さんはどんな本を読んでいるの?」
光は本のタイトルを見せる。
「三国志か。光さんは戦国に興味があるんだね」
三国志は魏、呉、蜀の三国を中心に描かれる。日本人であっても知っている人は多い。
光の一番好きな武将は、魏の龐徳。活躍期間は短いものの、勇敢なところに心を惹かれた。
「加奈さんはどんな本を読むの」
「私は白夜行だよ。映画にもなった有名な小説だよ」
光は興味ないけど、相槌はしっかりと打っておく。本命の女性の話を、途切れさせたくなかった。
「へぇ~。そうなんだ」
「作者のファンなの。最新刊を発行されるたび、書店に並んでいるよ」
加奈の視線は、光の隣の席に向けられた。
「隣に座ってもいい・・・・・・」
「ど、どうぞ・・・・・・」
加奈は何をしようとしているのか。一人の男性には、さっぱりわからなかった。
「心さんとの話を聞いていた。結婚前提の男がいるみたいだね」
「お嬢様に生まれたときから、決まっていたことみたいだな」
加奈は息を吐いた。
「私は浮気率99パーセントで、心さんは結ばれない確率100パーセント。光さんはと
ことん、女性運に恵まれないね」
「加奈さん、からかっているの?」
加奈は首を横に振った。
「私、心さんを合わせても2人だけだよ。他の女性については、どうなるのかはわからないよ」
「確かにそうだけど・・・・・・」
「友達としてなら、交流を持ってもいいよ」
「心配りはありがたいけど、もっと深い関係になりたいから遠慮しておく」
「友達から初めて、恋人に発展するかもしれないよ」
「恋人はゴール地点ではない。長期的に交際することを、目標にしている」
「そっか・・・・・・」
加奈は隣の席に座った。そのあと、会話をすることはなかった。
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