第3話 妹に浮気率99パーセントを聞いてみる

 光はスマホを操作していると、妹のみつばが部屋に入ってきた。彼女は4つ下の中学生である。


「おにいちゃん、何をしているの?」


「これといったことはしていないよ」


 M1チャンピョン2023の話題を見ていただけ。有益になるようなことは何もしていなかった。


「おにいちゃん、好きな人と距離を縮められた?」


「ううん。まったくだよ」


 みつばに二人の状況を軽く伝える。


「浮気率99パーセント以上といわれたのか。加奈さんもなかなか、えぐいことをいう女性だね」


「みつば、浮気率99パーセント以上をどう思う?」


「私はそんなことを考えたことがないから、発言の真意はまったくわからない」


 みつばは小さく息を吐いた。


「交際に発展してもいいといわれたことは、前向きにとらえてもいいんじゃない。NGといわれた時点で、好きな人と結ばれなくなる」


「浮気率99パーセントの女性と、交際するほどの度胸はないから」


「それもそうだね。堂々と浮気します宣言は、メンタルにグッとくるよね」


 みつばはポケットの中から、10円チョコを取り出す。


「チョコを食べて、元気を出してね」


「みつば、ありがとう」


 光はチョコを食べた直後、みつばは手を差し出してきた。


「おにいちゃん、10倍が・・・・・・」


 女々しい女性の掌を、やや強めにはたいた。


「おにいちゃん、セクハラだよ」


「うるさい。兄の心を弄んだお前が悪い」


「短気な性格をしているから、加奈さんにそっぽ向かれるんだよ」


 中学生になったばかりの妹は、生意気度が大幅アップ。小学生時代のかわいさは、完全に吹き飛んでしまっている。


 険悪な雰囲気になるかと思ったけど、そういう展開にはならなかった。生意気ではあるものの、場の空気をキープする心をわきまえている。


「おにいちゃん、飴玉を1個ちょうだい」


 引き出しの中にしまってある、飴玉を1個プレゼントする。


「おにいちゃん、ありがとう」


 みつばは飴玉をなめたあと、顔はおおいに歪んだ。妹の苦しんでいる姿を見て、腹を抱えて笑ってしまった。


「おにいちゃん、変な飴にしたでしょう」


 妹のプレゼントしたのは、「超鬼殺し飴」。新潟県を産地とする、唐辛子味のする飴である。


「ちょっとしたいたずらだよ」


「おにいちゃんの性格は、ひねくれているね。純粋な心を持たないと、女性と距離を縮められないよ」


 みつばは意地になって、飴を食べきろうとしていた。さすがにいけないと思ったので、ストップをかけた。


「みつば、無理をしなくてもいいよ」


 みつばは頑張ったものの、最後までなめることはできなかった。


「からい、からすぎるよ」


 激辛の飴を食べた女性に、とっても甘い飴をプレゼントする。


「こっちはとっても甘いよ」


「うひょをついたら、ひょうちしにゃい」


「今度は甘い飴だよ」


 みつばは袋を向くと、飴を口の中に放り込んだ。


「た、たすかった・・・・・・」


 甘い飴を食べたとしても、喉は完全に中和されない。光は扉を開けると、冷蔵庫に一直線に向かった。水分補給を終えたあとには、謝罪もしっかりとしたい。



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