【書籍発売決定記念SS①】新さんとメガネ 寧々side



 朝。お弁当を食べている新さんの横顔を私は見つめていた。



 薄く上品な唇、鼻梁が通っていていつ見ても芸術的なEラインにため息をつきそうになる。

 なんと言っても切れ長で涼しげな目元が同級生にはない大人の色気を醸し出している。

 


 いつもはメガネをかけてその魅力を封じているけれど家ではかけていないみたい。

 そのせいで裸眼だから色気がだだ漏れで私の心拍数が上がってしまう。



 それを悟られないようにいつも大変だ。

 


「お義兄さんどうして普段はメガネをかけているの? 家でかけてないってことは目が悪いわけじゃないんだよね」


 ふと疑問に思ったことを口にする。



 私の言葉に、お弁当を食べていた新さんが手を止めて流し目でこちらをみる。

 ああ、その目かっこ良すぎ。



 それと同時に、ご飯を味わいながら目を細めていたところが可愛かったのに、止めちゃってちょっともったいなかったな、なんて思う。

 



「そうだな、視力は両目ともに1以上はある。昔同級生に近寄りがたい雰囲気があると言われたことがあってな。俺はこの通り無駄に図体が大きい」




 新さんの身長は百八十六センチ、ただ大きいだけじゃなくて手足が長くて小顔、モデル顔負けのスタイルだ。



 少し歯切れが悪そうに新さんが続ける。



「おまけにこの三白眼だ。身長はどうにもならないから、印象を少しでも和らげようとメガネをかけ始めたんだよ」



 自分では三白眼といって卑下しているけれどミステリアスでかっこいいと私は思う。



「そういうことだったんだね、教えてくれてありがとう。ちなみに言ってた同級生ってもしかして女の子?」



「ああ、そうだ。言われたといっても女の子数人がこちらをちらちらと見ながらそう話しているのを聞いてしまったが正しいな。俺がそっちを向くと慌てて逃げて行ったよ。それからは遠巻きに見られるようになったんだ。恐らく怖がらせてしまったんだろう……」



 新さんはその時のことを思い出して遠い目をしていた。



 その悩ましげな目元もかっこいいけど、この話を聞いて私は確信した。



 絶対女の子たちは新さんに気があったんだ。

 こんなにも美形でスタイルも良いから近寄りがたいのも当然だよ……。



「それにしても寧々ちゃんはよく女の子が言っていたなんて分かったな」

 


「ま、まあね。その子達の気持ちが分かるからかな……?」



「気持ちが分かるということは寧々ちゃんも怖いのか。今からメガネをかけようか? 家だから気を抜いてしまっていた」



 驚いたように尋ねてくる新さんに私がぼかしながら返したせいで勘違いをさせてしまった。


 新さんは人のための気遣いが出来る優しい人なのだ。落ち込ませちゃって少し胸が痛い。



 咄嗟に私は訂正する。



「ううん、お義兄さんのこと知ってるから寧々は全然怖くないよ? 万が一、もしかして、見た目の印象だけでなら近寄りがたいって思われちゃうのかもなって想像出来ただけで寧々はそんなこと思ってないから。むしろ裸眼とっても素敵だよ!」

 

「そ、そうか? なら良かった」




 私の怒涛の言葉に少し圧倒された新さんだった。

 まるでアニメの良さを語っている時の陽葵みたいになっちゃった、と反省する。



 そこから誤魔化すように話を続ける。

 


「そ、そうだ。メガネって他にも持ってるの?」


「ああ、状況に応じて変えるようにしてるぞ」 

 


 新さんは気にすることなくお弁当を食べすすめながら話を合わせてくれる。



 私はその光景を眺め、この景色をいつまでも独り占めできたら良いのにな、なんて思いながら心臓が強く鼓動を刻むのを感じていた。




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【お知らせ】


皆さまのおかげでこの度なんと

角川スニーカー文庫より3/1(金)に発売することが決定いたしました!!

本当にありがとうございます。とっても嬉しいです。


特設ページはこちら

https://sneakerbunko.jp/series/hanayome/


現在予約受付中ですので、よろしければぜひお申し込みをお願いします!


今回は発売記念SSの第1弾ということで第2弾は発売日前日の2/29(木)に公開予定ですのでお楽しみにお待ちくださいませ!

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