第11話 寧々side② 恋人みたいにみえるかな?
並木には新緑が青々としている。
スーツ姿の
「ふふ」
嬉しい。慰めにいった私の方が元気もらっちゃったな。
「
「マジかよ! めっちゃレアじゃん」
「両手で口元隠してるところとかマジ清楚……」
ひそひそと男子たちが噂しているが
そんなことはお構いなしに、寧々はスマホを取り出してディスプレイを眺める。
「変な顔」
そこには今朝、
お弁当とお箸を持って仏頂面をしている
「ほんと、変な顔してるなぁ……。私」
その顔はにやけそうになっているのを堪えているようにもみえる。
みる人がみればそれもまた悶絶するほどかわいい表情なのだが、本人はお気に召さないようだった。
「でも仕方ないよね」
だってスーツ姿の
初めてみたけど、ピシッとスーツを着こなしてて、仕事ができる完璧上司って感じがしてかっこ良すぎだよね。
にやけないように抑えてたり、目に焼き付けようとみつめてたけど変に思われなかったかな?
今朝のことを振り返りながら
削除して撮りなおすことも考えたけど、
上手く撮れるようにこれから頑張らないと。
拳をギュッと小さく握りしめて決意する
そしてディスプレイに視線を戻して、嘆息する。
「はぁ」
何度みてもかっこ良すぎ、と心の中で
すると後ろからポンと肩を叩かれる。
「おはよー
「おはよ、
「ほんと? 大丈夫そ?」
「うん、大丈夫」
「うん、顔みたらめっちゃ元気そう。てかいつもより元気じゃね?」
「そうかな? いつもと同じだと思うけど」
「ちがう。毎日みてんだから分かるしー。
いつも通りの低血圧で透き通るように白い肌、そして表情に乏しい寧々だが今日は頬がほんの少し紅潮していた。
普通の人が見れば見逃すほどの小さな変化。
だが
「んー。いいこと、あったかも」
「えー! 激アツじゃん! 教えて教えて!」
「どうしよっかな」
「
二人のあいだを割って入ってきたのは
「え、今日の
「だよねー!
「うん、すぐ気づいた! これは乙女案件だよね」
「私、いつもとそんなに違うかな?」
首をこてんと傾げながら疑問を口にする
それに対して二人は声を揃えていう。
「「ぜんっぜんちがうから」」
それは学校について朝のホームルームが始まるまで続いた。
○ ●
夜。
ぽふん、と布団に倒れ込む
身支度を終えてあとは寝るだけ。
かわいいキャラが絵が描かれた寝巻き姿の
「明日は
「大丈夫だよね、二人にも一緒にみてもらったんだし」
あれから
話を聞いた二人は、「応援するよ!」と
複雑な関係性になっているとはいえ
当然、料理を教えることになったことも伝えた。
後日、その日のための服をみんなで買いに行くことになったのだ。
そのとき買った服がいまクローゼットにかかっている。
「いつもとは系統ちがうけど、あの服を着れば大人っぽくみられるかな? この前も子どもだと思われて話してくれなかったことあったし……」
この前とは、仕事を辞めることになった事情を隠して話してくれなかったときのこと。
聞けば私が心配すると思ったんだろうな。
本当は私に話して欲しかった。
心配かけさして欲しかった。
甘えて欲しかった。
だから事情は知っていたからつい自分から言ってしまった。
それを聞いた
自分が恥ずかしいとか辛いとかじゃなくて、ただ私を心配しての表情だった。
私はすでに十八歳を迎えている。
自分を大人だとうぬぼれることはないけど、もう成人だ。
法律が変わって高校生であっても十八歳であれば結婚もできるし、未成年じゃないからそのことで新さんに迷惑をかけることもない。
でも、私はまだ頼りないんだろうな……。
だって、私は
そんな不安を胸にしまって、寧々はスマホを眺める。
フォルダにまとめている
「……恋人みたいにみえるかな?」
口から小さく漏れた発言に自分でも驚く。
体がカッと熱くなり、ベッドの上でジタバタと悶える。
しばらくして、呼吸を整えて落ち着かせる。
机の上に置いた包み紙に目をやり、明日のことを想像する。
「楽しみだなぁ、ふふ」
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