第10話 元婚約者side② 綻び
「やっぱ、カップ麺うめえ」
「……うん、美味しいね」
とある日の昼下がり。
「どうしたんだ
「ううん、美味しいよ。ただ……」
(あれから何度か手料理を作ったあと、
「あー、味に飽きたってことか。だったらマヨネーズたっぷりかけたら味変でめちゃくちゃ美味いぞ!」
「じゃ、じゃあちょっと貰おうかな?」
(
「おう、貰ってくれ。そうだ、この前新作見つけたんだよ、これシーフードホットチリチーズっていうんだけどよ、美味しそうだよなー」
屈託のない笑顔を向けられた
「し、新作ね! お、美味しそう!」
「だろ? 晩飯はこれで決まりだ!」
(ふう、箱入り娘の
「え、今日は私が夜ごはん作るよ? ほら、ここに来た頃の何回かしか作ってないし、そろそろ私の手料理が恋しいんじゃないかな? 美味しいって
(前に手料理を作ったときはたくさん作っちゃったのに任せろって言って全部食べてくれたの嬉しかったなあ。でも最後にはマヨネーズをかけてたけど……)
「いっ!? ええと……
「そうかな……?」
「そうそう! 自分では元気そうでも実は気疲れとかしてるんだって! 俺のことは心配いらないから大丈夫、今日はこの新作のカップ麺にしようぜ? な? 俺は
大粒の汗を垂らし、ぎこちない表情で
「私の心配してくれてるの?
(あ、あぶねー。今日も
(頑張ってくれてるのは嬉しいんだけど、暗黒物質や未知の液体、この世のものとは思えない味を毎日ってのは流石にキツい。それに料理の材料を買うときも俺のためって言ってデパートで最高級の食材を買おうとするからヒヤヒヤするんだよな。毎回なに買うか悩んで時間が掛かってかなり待たされるし、そんでそれをダメにするし、家計的にも精神的にも辛いものがある)
「ごちそうさまでした」
「じゃあ容器捨ててくる」
「
カップ麺を食べ終えた
(あーあ、カップ麺やインスタントばっかってのもそろそろ飽きてきたな。はぁ、俺は料理できねえし、久々に
「よし、洗濯物でもすっかな」
「……いつもごめんね」
「気にすんな。俺は一人で過ごしてる期間が長いからこれくらい平気だって」
(
初めて
クリーニングなんて普通の服ではあまりしない。いい服だったりスーツやコートくらいだ。
それを毎日してたらお金はバカにならない。
いつもどうしているのか聞いたら『お手伝いさんにやってもらってる』とのことだった。
お金持ちの箱入り娘って感じがして面白いと思ったが、今後のことを考えると
普通はどうしてるのか逆に聞かれたので『洗濯機を使って洗濯するんだ』と伝えた。
洗濯機に興味を示したようで
一通り操作を教えてから任せたが、それが失敗だった。
どうやら洗剤を一回で全て使い切ってしまったらしい。
それから掃除だったり、もう一度洗濯したりと大変だった。
いくら教えても進歩がみられなかったので、洗濯は
(家事って毎日だし、それが分担できないって大変だな……)
「そうだ
「挨拶?」
「だって私たち結婚するんだよ? ご挨拶は必要でしょ?」
「そうだったな。また聞いとくよ」
「うん、お願い! あと、私の両親にも会って欲しいんだけど……」
「ああ、そうだな。俺も会って挨拶と謝罪をしないといけねえなって思ってたんだ!」
「ほんと? 考えてくれてて嬉しい。でも、怒られないか心配で……」
「まあ怒られるかも知れねえけど、俺たちは真実の愛をみつけたんだ。しっかりと話し合えば分かってくれるさ」
「そうだよね。これは真実の愛だもんね。分かってくれるよね」
二人は
真実の愛。そう伝えれば両親が理解してくれるなどとどこまでも楽観的に捉えている二人だった。
自分たちがどうなるのか知るよしもなかった。
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