第513話 数十秒、数ミリ、数ミクロの世界

「ほら心音、攻められてるのが分かるでしょ?」


「別に、攻められてる、訳じゃ、ないし!」


「必死に避けてるけど体力の限界でしょ?」


「そっちこそ。限界なクセに!」


2人は観客など観客の目などお構い無しに目の前の相手にだけ集中していた。

だが雫の言葉、男嫌いを治すくらいの男に出会った、という言葉から50対50だったのが、70対30くらいにパワーバランスが崩れた。一気に心音の方が不利になっている。

だが不利と言っても母親の方も上っ面では平気ぶっているが限界が近い。2人とも限界は近い。勝負も時間も後少しで終わるがその前に体力の限界が近い。体力の方が終わる可能性すらある。


「残り2分!2分です!」


雫の声が聞こえる。


「2分だって。もう勝ち負けはついたよ。」


「何言ってるの?まだ終わってないでしょ?油断するんじゃないわよ?」


「油断?違うね。もう母さんには力が残っていないだからもうその場所から動けないんでしょ?」


「バカね。」


「は?」


「アンタはバカよ。」


鉄骨の上に乗りながら彼女は話す。


「作戦ってモノを知らないの?」


「はん。ハッタリだけは上手だよね。」


「アンタには結婚してもらう。そのためなら何だってする。」


「どうしてそこまでして結婚させたいの?」


「アンタと黒井さんがお似合いだからよ。だから早く結婚して所帯を持ってほしいのよ。」


「そっちの言いなりになるわけないでしょ?」


「でもいつかは結婚するんだから。」


「そ、そこは分かんないでしょ?」


「じゃあアンタは結婚もしない人と付き合ったの?アンタの異常なブラコンと異常な男嫌いを治した人ってのはその程度の人間って訳?」



「残り1分です!」



「それは…………それは今は分かんないけどそのうち分かる…………」


「今でもわかってるでしょ?わかってるから言いたくないだけ。」


「違う!」


「違うくない!」



「残り30秒!」



「そんな説教されてももう残り時間は後少し、この勝負私が勝っちゃう………」


「アンタが勝手に開いた延長戦よね?」


「へ?」


「ならちょっとくらいの小細工は許すよな?」


そう言って心音に投げつけたのは


「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」


ゴキブリの オモチャ。


倒れた心音に向かい鉄骨からジャンプする母親。


「10 9 8 7 6 5 4 3 2 1…………」


「どっち?どっち?」


「どっちが勝った?」


「ゲームオーバー?確保?」


「残り時間は数十秒、ミリ単位の結果になるよ!」


「さて、勝者は……………」


心音か母親か、結婚かそれとも結婚延期か。さてどうする?どうなる?

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