第501話 諦めが悪いとか往生際が悪いとかそれ全部褒め言葉ですから。

「ね~。晃太くん。」


「何だよ………」


「今何時?」


「何時だろうな。」


「スマホ見れば分かるじゃん?」


「見る気もないし。」


「じゃあ私がみーる!あ、16時だ!」


「もうそんな時間か。」


「ね~晃太くん。」


「だから何だよ?」


「いつまで歌ってるんだろうね?」


「知るかよ。」


結果発表後、テンションマックスになった母は歌いまくりそれに感化され皆も歌い出す。そのループでもう何時間歌ってんだろうか。


「声が枯れるまでかな?」


「声帯壊すまで歌うの?嫌なんだけど。そんな耐久レースみたいなの。」


「けどアリスも楽しそうだしいいじゃん。」


「そこだけは良かったよ。アリス先輩だけでも楽しんでくれたらもうそれでいいわ。」


「何?彼女である私を差し置いてアリスにそんな感情を?浮気?」


「親心みたいなモンだと思ってほしいな?初めてカラオケに来たお嬢様だぞ?楽しんでくれてそりゃあ良かった、ってなるだろ。」


「ふ~ん。」


「何?その顔?別に浮気だと思うなら思えば?アリス先輩にはしっかりと大事な人いるし大丈夫だろ。」


「それに私もいるしね?浮気なんかしたらち○こ切って鍋で煮込んでやる。」


「切るだけで脅しになんだよ。何で煮込む?」


「出汁でるかな?って実験。」


「人を鶏ガラみたいな扱いすんなよ?」


目の前で暴れまくる全員を見ながら………まだ2人は話す。


「ね~晃太くん。」


「何?何回も何回も何?」


「お姉さまはいつになったら起きるかな?」


「知るか。起きないかもよ。」


「え、死亡?」


「いや、なんか障害残して起きてきそう。記憶障害とか。」


「それも嘘でしょ?」


「嘘とか言われても突き通すだろうな。だって姉貴だし。」


「結果が出てもまだ足掻く気満々な訳だね!」


「足掻くって言い方は嫌な言い方だけどまぁそうだな。足掻くだな。」


負けは負け。結論姉貴は結婚する結婚届を出すことが決定している。だからまぁ足掻くだろうね。


「てか姉貴はまだ寝て………」


姉の方を向いたその瞬間ムクっと立ち上がった姉。


「おぉ………ビックリしたぁ」


「お姉さまおはようございます!」


「……………トイレ…………」


そう一言だけ言って外に出る。


「もう目が死んでたよ?諦めの目してたよ?」


「諦めの目がどんなのかよく分からないけど確かに生気は感じなかったな。」


「もう諦めたんだよ。結婚に気持ちを切り替えるためにトイレにいったんだよ!」


「そんな決意表明のためにトイレに?」


「そうに違いないよ!」


自信満々にいう香織のこの言葉。この言葉がすぐに全く違う、姉には諦めという文字がないことを理解することになるとはまだ知らない。

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