第490話 また新たな火種と新たな女の予感

歌うことは好きだ。趣味は何だと聞かれたら真っ先に音楽と答えるだろう。ただ歌うのは人前ではなく1人の時に。だって変な評価をされなくて済むし何より気楽だ。だから歌うのは1人の時がメインだったのに。


「っあ……………もういいだろ………」


百舌鳥先輩からは粉の雪。

雫からはさっきも出た推しの何とかの2期のオープニング。

アリス先輩からは何処で知ったか知らないが瞳閉じるやつ。

彗からは怪獣のやつ。

乃蒼からは何故だがしらないがよふかしするうた。

香織からは十八番のうっせぇ!と連呼できるアレ。

6人全員の無茶苦茶なオーダーを何とか乗りきった。もう30分は1人だけで歌ってるぞ?

ドリンクの替えもないし。気が利かないな。マジで。

で最後の採点が出る。


「97.52」

「え、マジで凄いわ………ちょっとひく。」


「歌わせといてそれはナシでしょ?」


「え、だって1曲目は98で2曲目が97、3曲目が99、4曲目が96、5曲目が96、6曲目が95、7曲目が97でしょ?」


「プロじゃん。」


「何の?」


「歌い手したら?」


「しませんよ。」


「学校で披露しましょ~!」


「絶対にやめろ。」


「じゃあ………放送室から………」


「迷惑だ。」


「じゃあテレビに!」


「出れるか!こんなレベルで!」


「出れますよ!平均約96点。これは凄いことですよ!」


「凄くねぇ、凄くねぇ。」


「凄いよ!」


「うるさ…………声のボリューム、てかマイク使うなよ………香織」


「大体私は思ってたんだよ!晃太くんの歌は上手すぎるって。」


「お前のさじ加減………」


「私入れて6人の意見でも?」


「っ……………」


「大体何に怖がってるの?」


「怖がってないし。」


「じゃあ何で皆の前で何で歌わなかったの?」


「ポリシーだよ。ただの。歌いたくないだけ。大人数のところで歌いたくないだけだよ。」


「じゃあなれたよね?」


「なれた?」


「晃太くん設定忘れてるかもしれないけど」


「設定言うな。人間だぞ。」


「愛梨は自分の番組を持ってるんだよ?だから」


「すぐさまゲストに呼ぶね。」


「やめてくれません?」


「歌声を響かして。」


「私の彼氏夫はこんなに歌上手いんだぞ。って伝えてきて!」


「何でお前の変なワクワクから俺が歌わないといけないんだよ。」


「次の金曜日にお願いするし。」


「早っ。返答もしてないのに早くない?」


「金曜日になればしれ渡るのか。私の彼氏夫はこんなに綺麗な歌声をしているんだっ……」


「てかお前ら趣旨ずれすぎだろ!バトルだろ?最終バトルだろ?3本勝負の?なのに何で俺が歌わないとてか何故に俺がずっとマイク握りしめてんだよ!バカか!」

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