第450話 人生はTシャツ。汚れて当たり前。だがその汚れがその人の個性となる。
沈黙は数秒続いた。が、話を始めたのは母だった。
「私も2人子供産んでお父さんとも出会って結婚したけど。私はそんな誇れるほど立派な生き方はしてないわよ。」
「俺も立派な生き方はしてない。それに晃太くらいの時にはヤンチャしてよく先生に怒られてたよ。校長のカツラとったりしょーもないことだったけどね。髪も染めたしピアスも開けたよ。」
「黒井さん………だったわよね?」
「………はい。」
「うちの娘を見て。出来損ないでしょ?」
「ちょ………」
「けど、そんな出来損ないでも家事はマトモに出来るようにと教えたから家事は出来るでしょ?」
「あ、はい………」
「まぁ、ブラコン狂人が全てを壊してたんだけどね。」
「言い過ぎじゃ………」
「晃太もそうだ。」
「え、俺?」
急に矢が飛んできた。
「女々しいというか優柔不断というかホントに香織ちゃんとの結婚を何度も何度も断るんよ?」
「てか待て。結婚まで認めた覚えはないが?」
「ほら。またあんなこと言う。」
「無茶苦茶言うからだろ?」
「まぁ、とにかく」
「流すなら話しかけんなや。」
「完璧な人間なんて1人もいない。この世に汚れがない、綺麗な人間なんて1人もいないよ。それがどれだけデカイ汚れでも小さい汚れでも生きていれば真っ白なTシャツも黄ばんでいくよ。それは生きた証だから。その黒井さんの昔いじめられてた話もそのいじめていた人らをボコボコにしたのも少年院に入ったこともホストしてたことも30で死のうとしてたことも。全て真っ白なTシャツにかけられていくよ。それで白いTシャツが黒く染まってもそれはその人の個性そしてオリジナルなんだから。黒いままでOK。私たちは何も気にしない。だって個性だしそれは黒井さんのファッションと同じだから。」
母の言葉はしっかりと自分の芯を持って話していた。そして真っ直ぐ黒井を見つめて目をそらさずにいつもはお茶らけて酷い下ネタも軽々しく言う母が真っ直ぐ、そして真面目に黒井に、黒井の心に語っていた。
「だから。黒井さん。」
黒井に向き直した母、そして父。
「「こんな出来の悪い娘ですが、精一杯愛してあげてください。結婚……おめでとう」」
「……………はい。幸せにします。必ず幸せにします…………」
涙をにじませながら黒井、そして母、父は土下座を両方していた。
「こんな俺を認めてくださった心音、そしてお母様、お父様に感謝を示して残りの人生全てを心音に捧げます。捧げて幸せというモノを見せていきたいと思います。」
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