第445話 情報量多すぎると一口では噛み砕けない。歯も心も折れる。

「えっと…………麦茶でいいかな?」


「あ、麦茶で大丈夫です。」

「お気遣いなく~」

「私は……オレンジが……いい……」

「乃愛ちゃん、そこはお気遣いなく~で済ませないと。」

「久々に来るな。お前んち。変わらないな。」

「私は何でも構いません!愛人様のコップで飲みたいです!」


「では本題に入らせて…………」


「ちょっと待って。ちょっと待って。ちょっと待って。ごめん。ちょっと待って。」


母が連呼する。


「どうしましたか?お母様?」


「あの~…………色々あるんだけど。まず、結婚するの?」


「はい。」

「………一応。」


「あの心音が?あの弟狂いのイカれたブラコンが?」


めちゃくちゃ言ってるけど全部その通りだからね。


「一応セックスもしてます。」


「してる?セックス?心音が??」


心臓止まるんじゃないか、くらいびびってるけど大丈夫かな。


「ちょっと待ってね。噛み砕けない。お父さん。パス。」


「え~っと…………俺が聞いてたのは晃太と香織ちゃんの中だしセックスだけだったからもちろん2人だけが来ると思ってたんだけど…………こんなに付き添い………いるかな?」


至極真っ当な意見で腹立つ。ちゃんとした理解力もあるやん。うちの親。


「すみません。実は黒井は私の執事でして。」


「執事?」


「百合愛グループって知ってますか?」


「あの有名な………」


「それ私です。」


「え。」


「それが私でその私の執事が黒井なんです。」


「ちょっと待って。ちょっと待って。あの百合愛グループのお嬢様の執事に恋して今結婚の挨拶に来てると…………」


「はい。その通りです。」


「お母さん。パスで。」


胃もたれしてない?


「その大グループの執事がうちの娘と結婚?」


「そうなってほしいな、と思っていますね。」


「で他の方々は?」


「あ、私は愛人様の愛人で。」


「晃太に愛人いるの?」


「いますよ。」


「こいつが勝手に言ってるだけだよ。」


「愛人………で?」


「あ、親友の進藤です。お久し振りです。」


「進藤くんは知ってるわ。何か安心………」


「でその彼女の愛梨です!」


「彼女………」


「アリスの彼氏の五十嵐 忍です。」


「お嬢様にも彼氏がいて………」


「あ、はじめまして~!雫ちゃんと」

「乃愛………カップル………だお?」


「そこの女子2人は彼女……彼女………」


「どうですか?理解できました?」


「ちょっと待ってね。噛み砕けないし噛み砕くのにまだ数十分はかかるかもしれない。」

「俺も無理っぽいな………」


「じゃあゆっくり待ちます。私たち学校休んでるんで。」


「「休んでるの?」」


そこだけはお前らが引っ掛かるとこじゃないだろ。同じ穴のムジナだろうが。

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