第439話 行きと帰りで立場が完全に逆転することなんてこの世に存在する

彼女の叫び声はコテージに響いた。

いや、反響した。


「心音。静かに。近所迷惑やろ?」


「あ、確かに………って近所も何もここ森のコテージなんだからそういうのないでしょ!」


「おー、さっきまで酒で寝てたとは思えないほどのツッコミ力やな。」


「酒?寝てた?あ、そうだ。私和虎に煽られてめっちゃ度数の高いお酒飲んでベロベロになって………その後………その後………いや、思い出したらダメだ。ダメな記憶だ。」


「おとうとから聞いたで。心音は酒癖は悪いけどその酒の入っている時の記憶はしっかりあるって。」


「いや、いや、な、な、ない………ていうか何でこーちゃんがおとうと?おとうと呼びなの?」


「結婚するから。」


「は?」


「結婚するから。」


「誰が?」


「俺が。」


「誰と?」


「誰と……って分かるやろ?言わんでも。」


「……………イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ」


「否定しても俺の意思は硬いしまずヤることヤッたからな。もう無理やで。」


「ヤること…………」


「記憶あるやろ?」


「……………」


「何度も何度も何度も和虎大好き和虎愛してるって言いながらキスもして心音酒が入りまくると人の耳を噛みたがるんだな?だからほら見て?噛み跡がほら………」


「嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。」


「残念やけどバッサリ言うで?俺と心音は中だしゴムなしセックスをお互いの同意の元しました。」


「お、お酒が入ってる時点でふ、フェアじゃない!」


「知らんやん?心音が酒に弱いこと。」


「それは…………」


「まぁまぁ落ち着け。何もこのままこの状態でいるわけじゃない。だからさっきも言っただろ?結婚するから。結婚。俺と心音は。で明日挨拶に行くから。」


「はぁ?は、はぁ?な、何馬鹿なことを」


「真剣やで。明日心音の親の予定も空けてもらった。」


「空けてもらったというか馬鹿が勝手に空けてたというか…………」


「とりあえずヤッたからにはとかじゃなく心音のこと好きやから大事にしたいから結婚するだけや。分かる?」


「分かるも何も………情報が追い付かない………」


「いいよ。ゆっくり噛み砕いてくれよ。」


「……………」


噛み砕くにはちょっと岩くらい砕ける強靭な歯が必要かもしれないな………


と困惑する姉を見ながら晃太は思った。

そして来た時と帰る時の立場が完全に逆転してるのが人間ってスゲーな、って思いましたマル

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