第435話 急に聞き馴染みの無い呼び名で呼ばれると気持ち悪い。

嘘だよな。嘘だよな。嘘だよな。嘘だよな。嘘だよな。

心でも唱えながらその場所まで走る晃太。


「はぁ、はぁ…」


まだ体力は戻ってない。だがそこにいたから。そこに、姉がいたから。


「姉さん!」


しかも姉ではない。うなだれてる姉がいたから。


「姉さん!姉さん!しっかり!大丈夫?」


「こーちゃん?あー………おはよー。」


にへらと笑う彼女。口は酒臭い。かなり飲んでる。てかまだ半分起きてないだろ。まだ目がとろんとろんだ。


「大丈夫だった?」


「大丈夫?あ~、お酒?お酒私はつよーいから大丈夫だおー!」


「強くないのは重々知ってるから。しっかりしてくれ!」


ダメだ。まだ酔ってる。まだ夢の中だ。


「ちょっと待ってて。今水を貰いに……いや、買えばいいか。ちょっとま」


「ほら。おとうと。」


「へ?」


声のする方に目をむけると


「ほら。水。買ってきたから。心音に飲ませてやって。」


「黒井……………」


自分用の珈琲もちゃっかりある黒井の姿がそこにはあった。

とりあえず今はいい。

黒井から水を取り


「姉さん。水。」


「水?嫌だ。虫はキライ。」


「それはミミズ。今はじめに水って自分で言ってたじゃん?水ね?水。水飲んで。」


「お腹タポタポだお?」


「とりあえず飲んで!」


もう無理矢理飲ませる晃太。500のペットボトルの半分は強制的に飲ませた。


「ちょっと安静にしてて。」


「寝ててもいいぞ?心音。」


「黒井。」


「何?めっちゃ怖い顔するやん。おとうと。」


「聞きたいことは山ほどあるけど………まずエレベーター止めんな。」


「もう動いてるから。残念。」


「さっきまで動いてなかっただろ。残念。」


何が残念じゃ。この野郎。


「後今日帰るんじゃないんかよ?」


「いや、帰れへんやん。皆寝てもおたし。しかも俺も心音も酒飲んだから。きっつい酒飲んだから。今ならアルコール度数10くらいで逮捕されんで?運転したら。」


「じゃあどうすんだよ?」


「もう他の林間学校の人らは帰ってもおたしまぁ明日の朝か昼前くらいには出ようかな、と。まぁ酒が抜けたらやけど?」


珈琲飲みながら何を優雅に喋ってんだよ。全部自業自得だろ。飲まなきゃいいモノを飲んだ黒井が悪いから。


「まぁ、そんな怖い顔と怖い声すんなよ?おとうと。」


「ちょっと待て。さっきからずっと気になってた、その、おとうと。って言い方何だよ?」


「え?おとうと。はおとうと。や。」


「晃太でいいだろ。」


「まぁ、区切り?自分での線引きみたいなモノ?それが一番の理由かな。」


「意味わかんねー。何でお前の線引きで俺の呼び名がおとうと。に変わるんだよ?」


「そりゃあ………お前アレだろ。




俺たちセックスしたからさ。」


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