第344話 異常者が正常者ぶるな。

「キスもダメ!」


「何で?」


「何でって…………前も言ってたはずだけど…………ムードが………」


「ムードもクソもないでしょ?たかがキスの1つくらい?」


「私にとっては大切なモノにした………晃太、何その何か言いたそうな目は………」


「いや、別に………」


言いたいよ。言いたいけど言わない。大人だから。心の中で言う。

どの口がそのムードだ、なんだを言ってるんだよ!人におっぱい吸わせたりしてきた異常者のクセに!

と思いっきり叫ぶ。心で叫ぶ。


「まるで私が昔はおかしかったみたいな顔して…………」


「その通りじゃね?」


「は?」


「だって本気で晃太のことオスとして狙って色々ヤッたんだろ?話は噂で聞いてる。」


「噂でって…………知ってるヤツ限られてるんだけど………」


「発信源は、ア、タ、シ!」


「アタシじゃないし!この野郎!」


「雫様から全部聞いた。おっぱい吸わせたりしてたんだって?だったらオレにもしてくれよ?」


「変態!」


「どっちが変態だよ。」


「ぐぬぬぬ…………」


早く敗けを認めるべきだと思いながら見つめる晃太。

その敗け寸前の心音に畳みかける黒井。


「じゃあセクシャルはやめとくからキスで。しかもフレンチにしてやるから。な?」


「だから………フレンチとか関係なく……キスはムードが………」


「ムード、ムードってそんな言葉で逃げるけど、ムードって何だよ?」


「え?」


「理想のキスがあるわけ?」


「ある………けど………」


「じゃあそれをしたらそれのシチュエーションをつくればしてくれるわけ?」


「え?」


「ウチはあの百合愛様、つまりアリス様のおじいさまの富が山ほどあるんだよ?」


「だ、だ、だから?」


「金で解決できないモノはない。そしてこのコテージにないものはない!

てことでキスのシチュエーション言ってもらえる?」


「え、え、え……………やだ…………」


「やだって何で?」


「ハズイって………」


「じゃあ公開セックスにする?」


「トラウマになるから………」


「だからキスの一回くらい何怖がってんの?」


「怖くはないけど………」


「オレなんか数えきれないくらいしてるぞ?マジで?」


「最低…………」


「だから正常者ぶるなって。お前は立派な異常者だから。そんなんでひくようなヤツじゃないだろ?」


「異常者、異常者って………異常者じゃないから!」


「異常者は皆そういうの。だから大丈夫。」


「大丈夫って何!意味わかんな」


「とりあえずキスのシチュエーション教えてくれる?」


もう打つ手無し、逃げ場無しの心音は………

諦めたようにシチュエーションを話し出す…


「が、が、学校とかし、仕事場の時に……急に2人きりになって…………キスする…とか?」

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