第330話 こんな私でも愛してくれますか?

こんな私でも愛してくれますか?


それは黒井 和虎の中にあった一番の問題だった。

黒井は数々犯してきたモノがある。

犯罪も女も犯してきた。女に至っては食い物にしてきた。そんな中での心音の言葉。

好き、という言葉。アリスについてからアリスの執事となってからは女遊びもやめ、ホストも当然辞めた。だから数年間好きという言葉を言われたことはなかった。ただひたすら自分を、自分というクズを受け入れ助けてくれたアリスのために生涯を尽くそうと考えていた。

だからアリスに言われた自分の幸せを見つけろ、という言葉、そして心音に言われた好きという言葉、それにその言葉に甘えてはいけないと思っていた。だから、だからこそしっかりと聞いておきたかった。


こんな私でも愛してくれますか?っと。



「……………」


黙り込む心音。

フッと笑い黒井は言葉をかける。


「なんて。そんなこと重く考えた時点で無理ですよね。今の言葉は忘れて」


「黒井は…………」


「はい?」


考えがまとまったのかまとまってないのか分からないまま心音は自分の思いを告げる。


「色々なことやってきたかもしれないけど私はそれを知らないし、見てない。」


「でもタトゥーは見ましたよね?」


「タトゥーは………別にお洒落の一つだから別にいい。」


「…………少年院に入ってるんですよ?」


「黒井はさ…………後ろ向いて歩く?」


「はい?」


「人間誰しも前を向いて歩くじゃん。後ろ向きで歩くなんて器用なこと誰もしないじゃん。」


「つまり?」


「過去をずっと見ながら歩くなんてこと人間には出来ないんだよ。誰しも前を向いて歩くしか出来ないんだよ。だから少年院が何?暴力が何?女をメチャメチャ抱いた?何?そんなこと昔の話じゃん?ほっとけばいいんだよ?」


「…………貴女は………」


「私が好きになったアンタはそんなアンタじゃない。けど今すべてさらけ出しても何にも感じない。それくらい好きになってるってこと!」


「…………………」


「だから黒井は30歳で死ぬ予定だったんでしょ?30までに全てやりきったつもりなんでしょ?なら私に残りの人生かけてみてよ?私に残りの人生くださいよ?」


「……………」


「そしたら何かが変わるかもしれないし…変わらないかもしれないし……そんなこと今の私には分からないけど………それでも好きになってしまった以上アンタ、黒井を思う気持ちは消えないし消せない!だから過去がどうとか愛してくれますか?とか関係ない!私はただずっと晃太くんだけが好きでそれを覆したのがアンタなんだからちゃんと責任とって…………キャ!」



………キャ?

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