第302話 百合の花が咲く頃に
ドキドキして心臓が破裂しそう。
いや、心臓が飛び出てくる感覚。
今乃蒼はそんな感覚だった。
「どしたの?乃蒼。急にこんな人気のないとこ呼び出して?何かあった?」
「………………」
「何かこーくんと香織のヤツからここに行ってこいって言われたから来たけど?」
「………………」
「どうした?何か言いたいことあるん?」
「………………」
「ないん?」
「………………」
「黙ってても何にも解決しないけど?もういい?帰っても。何にもないなら………」
「…………ま、待って……………」
消え入りそうな声で話す乃蒼。
喉はカラカラだ。
「……………聞きたいことがある…………」
「聞きたいこと?」
「私たちの関係って…………何?」
「何?って。親友で………あとセフレ、じゃないの?」
「……………雫は………私…………好き?」
「は?好きってどういう意味の?性的な?」
「恋愛として…………どうか…………」
「恋愛として?う~ん。分かんないな。」
「じゃあ…………社 晃太は?」
「こーくん?こーくんは好きだよ?」
「それは………恋愛的意味で?」
「だろうね。けど私アンタも知っての通り長続きしないじゃん?だから恋愛的ってのも間違いなのかもって思うけどね。」
アハハ、と笑い飛ばす雫に乃蒼は核心をつく。
「私は…………好き………………」
絞り出すような声で言う。
「私は…………雫が…………幸山………雫が…………好き……………」
「それは前も言ってた性的な意味?」
「違う…………恋愛的な意味で…………好き…………大好きです…………」
好き、って言葉の重みが違う。
今乃蒼が出した好きは言葉の重みが格段に違う。だから……………
「いいかた…………悪いかも…………だけど……………おふざけ無しで答えてほしい…………」
乃蒼は全て言いきった。
香織に言われた通り全て言いきった。
当たって砕けろ、そう言われたからには全てぶつけていくしかなかった…………
沈黙が続く。
その沈黙が永遠に思えるようになっていた…
「私さ。」
「…………うん。」
「見た目はいいから男子がよくくるんだけど何か勝手に幻滅されて嫌われるし、女子も勝手に何かに期待して私のこと崇めるけど私は何も出来ないしそれで友達も少なくてさ。」
「…………うん。」
「だから、乃蒼がはじめてだった。色んなはじめてを乃蒼とした。」
「…………うん。ありがと…………」
「乃蒼。ちょっと屈んでくれない?」
「え?こう?」
「いや、もうちょっと。」
「こう?………」
「もう少し。」
「こぉ?………」
乃蒼と雫の身長の高さが同じくらいになった時。
雫の唇が動いた。
その唇が向かう先には…………
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