第293話 乃蒼と雫のホントのこと

サイド。

こちらは晃太、乃蒼。

晃太は悩んでいた。

雫、彗、心音から逃げ切れたのは良かったがよりによって一番接することの少ない乃蒼とは………。

なら百舌鳥先輩やアリス先輩………いやダメだ。あそこはカップル上手く成立してるからな…………。

それなら普通に香織か黒井さんか忍先輩が良かった、あ、あと進藤。

何だかんだで一番安心感あるのは香織だし、黒井さんは話を聞いてたら楽しそうだし、忍先輩はサッとやってくれそうだし、進藤はまぁ共にダラァっと出来そうだからな………

だからこそのよりによっての南 乃蒼はダメージが大きかった。

喋る内容も分からないし何が好きかも分からないし………とりあえずこの饅頭を置いてさっさと帰………

ドン。


「へ?」


背中を押された晃太は緩やかな坂を転がる。


「いてぇ…………何すんだよ…………乃蒼さ………」


そういって見上げる彼女の手には


斧があった。


「うわぁぁぁぁ!」


思いっきり斧をふる乃蒼。ギリギリでかわし木の幹に刺さった。


「おいおいおいおいおいおい………なんだよ?一体…………いきなり何しやがる……」


「ようやく…………出来る………ずっと……待ってた…………」


「何を待ってたんだよ!俺を殺すタイミングか?」


「うん……………」


「うんじゃねーよ!この野郎!何で俺を殺すんだよ!」


「好きな人の…………ため……………」


「お前………それずっと言ってるよな?お前の好きな人って誰だよ?俺が消えて喜ぶ人間って誰………」


「別に………消えても喜ばない………」


「は?」


「また私のところに…………帰ってくる……それだけ…………」


「言ってる意味がわかんねーよ!お前のところに帰ってくるってなんだよ?」


「私と………あの人は…………ずっと………一緒…………それを………お前が………壊した。」


「おぃ!あぶねぇ!」


ギリギリのところで斧を避ける晃太。

下にあった石は一刀両断されていた。

一歩間違えれば自分もあんな風に……

冷や汗が止まらない。喉もカラカラだ。


「誰だよ!誰なんだよ!その人ってのは!一体誰なんだよ!」


斧を持ち能面のように顔を変化させない彼女がようやくその人物の名前を発した。





「幸山…………雫……………」





「は?」


「幸山………雫…………」


「雫のためにお前が………」


「軽々しく雫って言うなぁ!!」


「あぶねぇ!かすった!」


乃蒼とは思えないほど大きな声で叫んで斧を振り回す。

そして驚愕の事実を吐き出した。


「幸山………雫………………。私の大切な人であり友人であり親友でありそして………

セフレでもある。」

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