第278話 鎖に巻き付かれた人間

うん?

湯気のせいか?いや、目がぼやけてるのかな?目を擦ろう。目を擦ろう。目を擦ろう。

…………うん………目をつぶって目をつぶって目をつぶって目を開けて目を開けて目を開けて…………


はい!


はい!はい!…………タトゥー………凄いです……………

イヤ、タトゥースゴすぎます………


「え、黒井さん?」


「……………はい。」


「黒井さん…………ですよね?」


「はい。」


しっかりと話す黒井さん。

黒井さんだ。あの清楚正しい、黒井さんだ。


「けど……そのタトゥー………」


タトゥータトゥーと何回も言うがどんなタトゥーか言ってなかった。

タトゥーの種類はたった1種類。1種類のみ。

鎖。鎖のタトゥーを全身に彫られている。

肩から肘まで両腕に鎖。

股関節から膝まで両足に鎖。

腹にも一周鎖。胸に襷のように鎖。背中には剣が2本あるように鎖が。

全身に鎖が彫られていた。


タトゥーだけじゃない。もちろんタトゥーも凄いがそれだけじゃない。体の筋肉がヤバい。忍を超える筋肉量、筋肉質、多分体脂肪率5はきってるな………世界的なダンスパフォーマーとかのレベルだ。筋トレとかしてないとか言わせない、てか言えない。だって普通に生きててこんな体なら晃太の体もムキムキじゃないと。ぷにっ。太ってないが筋肉はない。ガリではないが普通より体型スリムめな晃太から見たら忍先輩でもヤバいのにそれを超える黒井さんのヤバさ………


「え、てか………黒井さん………あの……」


「何でも聞いてください。私のことしっかり伝えますから。」


「そんな覚悟決めたみたいな…………」


「私を見る目が変わりますから。だから言ってるんです。こんなタトゥーまみれの男…」


「いや………タトゥーに俺は偏見とかないですしスゴいカッコいいと思いますし昔いれたい彫りたいな、とか思ったことありますよ。アニメのキャラとか見て。」


「ですが彫りたいだけですよね。彫ってないですよね。」


「………そうですね。実行はしてませんね……」


「実行しているのがバカですよね……こんな大人が………」


「イヤイヤ!そんなバカにしてませんよ!どちらかというとビックリしただけです。普段とのギャップに。真面目な方だから黒井さんは………」


「私は真面目なんて者じゃありません。」


その言葉はお風呂場に響いた力強い声だった。


「私は………真面目………ではない。私は……クズから拾われたんです。」


「拾われた?」


「…………少し昔話してもいいですか?」


そう言って黒井さんはある話を始めた。

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