第272話 聞こえてるけど聞こえなかった。
「……………」
「……………」
「……………」
リビングに残された3人。
晃太、進藤、乃蒼。
「……………」
「……………」
「……………」
気まずっ。
気まずっ。
もっかい言うわ。気まずっ!
「……………」
「……………」
「……………」
え。人いない?人いないかな。いないのかな?めちゃくちゃ静かなんですけど?
いや、晃太と進藤は喋れるよ?友達だから。
喋ろうと思えば。ただその彼が失神状態なので物理的に喋れないだけであって。
そっか。分かった。
これ3人じゃないや。2人と人形1個と考えるべきだな。進藤はもう起動しない。死んでないよ?死んでないけど今は寝させてやろう。
安息の時間をやろう。
と、言うことで。
進藤抜いて、晃太、乃蒼の2人きり。と考えるとより気まずっ。
コイツの中身がまだ分からないし本心も分からない。狙いも分からない。だからどうするべきか………よしっ。
晃太は腹をくくった。
「乃蒼……さんだっけ?ちょっと暇だし喋」
「ムリ…………しゃべれない………」
「……………」
くくった腹もすぐに切り裂かれるような言葉のナイフ。
ムリならまだ納得出来るけど……しゃべれないって………しゃべれないってしゃべってるじゃん。しゃべれないってしゃべってる時点でしゃべってるじゃん。しゃべってること嘘じゃん。しゃべれないって言ってしゃべってるから晃太ともしゃべれる…………
やめよ。頭が痛くなる。日本語の闇に飲み込まれる。
「ふぅ……………」
にぎやか、いやにぎやかすぎる声がキッチンから聞こえるなか晃太は一回背伸びする。
そして………スマホをいじろうとポケットから出す。
もう無理矢理コミュニケーションとる必要はないんだから。コミュニケーションとらずに1人殻にこもろう。
日本人はこれを陰キャムーヴと呼ぶがそうではない。これは1つの処世術なのだから。無理矢理コミュニケーションをとってもバカになるだけだから。良くない良くない。だから1人でいればいいのだ。
さぁ、全国の陰キャと呼ばれる者達よ。
立ち上がれ!この行動は間違ってないと!俺たちは賢いんだ!っと、そんな風に………
「はぁ………………………」
「うん?」
誰に向かっての演説か分からない心の演説をしている晃太の前で明らかに嫌そうな溜め息と嫌そうな顔をした乃蒼。
「ど、どうしたの?」
聞くのも怖いが、聞かないのも逆に怖い。
「しゃべろ…………」
「え?」
「暇………しゃべろ………」
「え?さっきしゃべれないって。」
「しゃべれる………」
「イヤ、しゃべれるのは理解してるけども………」
急だな………喋るのか………ならいいが……
「作戦のためには………情報…………多いほうが…………いいか………」
ボソボソっと言ったその言葉は残念ながら晃太には聞こえなかった。
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