第269話 無口な少女のプッシュイッパツ

「な、な、なんだ?なんの音だ?」


「だから晃太くん、今から、今から……抱いて………」


「馬鹿か!そんなことしてる場合か!お前には耳がついてないのか!」


「ついてるよ?ほら、福耳。触る?気持ちいいよ?」


「触るか!」


「福耳ってお金貯まりやすいらしいよ?神様は私に味方してるよね。」


「ただのいわれだろ?てかそんな場合ではなく!」


何悠長に話してるの?晃太と香織は。


「何この音は?」


「ピーピーピー、ピーピーピー、ピーピーピーでしょ?」


「音の音程の話じゃないから!」


「ミレミレミレミレミレかな?」


「知らない知らない知らない。」


誰が音の音程を詳細に聞きたいって言ったよ?


「とりあえず部屋から出よう!」


「何処に行くの?」


「知らんけど………音は………下から?下から聞こえてるかな?だから………下に行くぞ!」


「ピーピーピー鳴ってるとこにいくの?危険とか言ってるのに?」


「あ、あ、う、う………とりあえず部屋から出て1階に行くぞ!」


「あ、語彙消えた。」


「語彙が消えた訳じゃねーよ!口論するくらいなら早く行くほうが………」


「はいはい。分かりました。分かりました。下に行こうね?晃太くん。」


「そのなだめる感じやめろ!」


赤ちゃんとか幼児をなだめる感じやめろ。腹立つから。




「とりあえず1階に下がってきたけど……」


「何処から?ピーピーピー。」


「こっちか?いや、あっちか?」


「あ。」


「何だ?あったのか?」


「あ、愛梨。」


「あ、晃太くんに香織。」


「愛梨もこの音につられて?」


「うん。セックスの最中だったのに耳障りだから消して第2round始めようかなって。ね?優くん?」


「……………」


「ありゃ。立ったまま寝てる。器用だね?」


いや、立ったまま気絶してるんじゃないか?あれ?


「あ。」

「あ。」


「何だよ?何か用か?あん?」

「用はねーよ。テメェみたいなやつに用はねーよ。ただ音が気になったんだよ。うちの彼氏が。」

「ほー。そうなんだ。うちの愛人が。」

「あ?」

「あ?」

「あ?」

「あ?」


メンチ切ってる彗と香織。よくこのうるさい中でメンチをきれるな。

って、あ………


「音………消えた。何だったんだ?一体…」



「全員………集まった?」


「へ?」


その声はあまり聞き馴染みのない声だった。


「南………乃蒼………さん?」


1学年下だがなんか背も高いし威圧感あるしさん付けがしっくりくるな。ちゃんは少し変だな。


「これ、君がしたの?」


「……………まだ少し………いない……でも………いいや。」


「無視かよ………」


掴めないヤツだよ。ホントに。


「私………皆呼ぶため………ボタン押した………」


「それ災害時とかに使うヤツでしょ?」


「使った…………」


「………………」


迷惑な話だ。災害時に今度は嘘かも?とか思ったらどうするつもりだよ………


「皆………呼んだ………理由………他でもない…………1つ………言いたい。」


「言いたいこと?」


「何よ?」


「…………今日………夜………肝試し……する。」


「は?」


「これ…………決定事項……決まり。」




この時乃蒼が言った肝試しがまた波乱を呼ぶとはまだ誰も気がついてなかった。

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