第260話 持久走で一番最初に走る馬鹿はすぐ脱落する

「沢 香織様ですが、何か?」


「いや………その………」


ヤバい。ペースを乱されたら終わりだ。晃太には晃太の、香織には香織のペースがある。だからこそ自分のペースを保たないと。

持久走でもそうだ。バカみたいに早く最初から走っても後々疲れたらゴールまで辿りつけない。かといって馬鹿みたいにノロマなスピードで走っても、いや歩いてもいくら経ってもゴールしない。自分の。自分自身のペースを守る。それが一番大事。だからペースを乱し全ての自分自身の力を抑えつけられた進藤は今や百舌鳥先輩の奴隷と化している。

だからこそ。奴隷にならないために。いや奴隷もいいかもしれないけどさ。王様倒せるのは奴隷しかないけどさ。ちょっとカッコいいけど………やっぱりせめて彼氏のままで彼氏の範囲内でおさまりたいじゃん?やっぱり。

だからペースは乱さない。


「いや、香織。」


「……………」


「無視しても言うぞ?俺とお前は一応彼氏彼女だ。」


「一応じゃなく確実に神様が定めたモノ。規定されたモノ。」


「急に喋ったと思ったら無茶苦茶な………」


晃太は神様を信じない主義なんです。某海賊狩りに憧れて。だから。


「神様がどうこうとか関係ないから。話をずらすな。俺が言いたいのは……その……胸の件だ。」


「おっぱい吸う揉む問題だよ。」


「言葉にするとより頭悪いからやめよう。頭悪すぎるから。」


「それが何?何?したくないの?私とは?へ~。雫やお姉さんとはヤッたのに?」


「そこだよ。香織。そこが違う。」


「何処?何処が違うの?」


「雫、姉さんの胸を俺は揉んでないし吸ってない。ちょ………香織?何持って……」


「良かった。予備があって。」


ポケットから出してきたのはフォーク。キラキラ光る金属のフォーク。


「這いよる渾沌ニャルラト」


「お前はそんな生物じゃねーし。まずその生物はフォークを持たない!フォークを怖がるほうだよ!」


何処から間違い情報を直すべきか……


「とりあえずそんなことはどうでも言い訳。何晃太くんは言ってるの?吸ってないし揉んでない?」


「そうだよ!お前は現に見てないだろ?雫と姉さんの話を聞いただけだろ?」


「でも事実だって自分で言ったよね?」


「ま………事実だけど………」


「じゃ、嘘じゃん。何言ってるの?」


「とりあえず………その揉んで吸っては無理矢理ヤられたことなんだよ。」


「で?」


「つまりは事故!俺らが付き合う原因になったことと一緒な訳よ!」


「はぁぁ?」


「え…………」


めっちゃメンチ切る香織………

え、いや………今の言葉に地雷要素……あった?一文字一文字気をつけるの無理があるって……

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