第251話 ゾンビ映画で最初に消えるヤツって大体態度悪いヤツだよね。

「愛梨どこまで行ったのかな?」


「知らねーよ。てか………」


「てか?」


「進藤も百舌鳥先輩も2階から飛び降りてこの森の中に逃げ込んだとしたらだいぶ頭イカれてるぞ?」


「大丈夫。愛梨はこっち側の人間だから!」


「違うって。こっち側の人間じゃなくてお前がこっち側の人間にしたんだって。」


自分を指差しにんまりと笑う香織。

いやいや、百舌鳥先輩は元々はマトモな枠…いや初めはちょっとくらいイカれてるマスゴミ枠だったのに香織が自分のワールドに引き込んだんだろう。元はそんな愛に狂った人ではなかったよ。


「てか、いつまで歩くの?」


「え?」


「かれこれ10分は歩いてないか?」


「歩いてるね~。緑豊かで綺麗だよね~。」


「綺麗とかではなく。迷うから。」


「いや、まだ見えてるから。コテージ。」


バカデカイから確かに見えてるよ。コテージ。だけどね。


「ずっーと無駄に歩いても意味ないだろ。俺らはGPS知らないんだから。」


「進藤のGPSとかいらないからね」


「うんなこと聞いてねーよ。」


お前の欲しい欲しくないは知らないから。


「とりあえず百舌鳥先輩に電話してよ。」


「なんと。この森。電波が通じて」


「るんだろ?知ってるから。早くかけろ。」


「もう。晃太くん遊び心がない。」


遊び心より早く帰りたい。その心がだいぶ強いから。


「はいはいかけますよ~だ。あ、スピーカーにしとくよ。晃太くんも聞けるように。私は完璧だから!」


「完璧なヤツは完璧って言わないんだよ。あ、出た。」


「あ、愛梨。今どこ………」


「ターゲット確認。」


「へ?」


「ロックオン。」


「ちょ、百舌鳥先輩?」


「……………」


無言になりただ走る音と誰かを追う音が聞こえる。

ザッザッザッザッザッザッ………

はぁはぁはぁはぁはぁはぁ………


「なにこれ。」


「とりあえずフジテレビの人気番組の逃げるヤツの逃げてる時のBGM流したいよね!」


確かに合いそうだけど。晃太的には捕まったら死ぬ、そんな映画のような感じ見えるんだけど………


「ちょ…………百舌鳥先輩………何でここまで……」


「あ、進藤だ。」


「ちょ、待って………やめて………止まって………追いかけないで………ちょ、怖……ちょ、助け………あ~!助けて~!」


プツン。


スマホの電話はそこで切れた。


「うん。とりあえず進藤は捕まったみたいだね。」


「いや、色々言わないといけないぞ?これは。」


「何が?」


「ホラー映画じゃん。」


「え?」


「ゾンビ映画じゃん。」


「へ?」


「ケータイのきれかたとか助けてとか。もうこれは事件だから。ほとんどホラーかゾンビ映画で最初の犠牲者が出た時のシーンだから。」


「大丈夫。愛梨はゾンビでもホラーでもないよ?」


「自分の彼氏にGPSつけて2階から飛び降りて素足のまま森の中追いかけていくのはホラーよりな気がするけども?」


百舌鳥先輩もやはりダメな色に塗りつぶされてきてる。

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