第231話 無は1番の武器

「フフフ♪フフフ♪フフフ♪フフフ♪フフフ♪」


上機嫌な女、いや彼女、いやいや香織………


「晃太くんのキス~。晃太くんからのキス~。情熱的なキス~。」


「情熱的ではないけど?」


「妖艶なキス~。」


「やめろ。恥ずかしいから。」


「まるでプリンプリンのプリンみたいに柔らかい唇が当たったキス~。」


「プリンプリンのプリンって意味分からんだろ。プリンにプリンプリンってつけるな。大体プリンプリンってエビとかにつかうだろ?テレビの番組でそんな検証してたぞ?」


てか柔らかいものの例えでプリンなのか?まぁ、確かにプリンは柔らかいけど………例えばマシュマロとか……いや、マシュマロは柔らかいのか?いや、スライム?う~ん、何かベタベタしてて逆に嫌だな………え、柔らかいモノの例えで1番良いのって何?分からん分からん分からん。教えてくれよ。てか柔らかいモノの話してないし。まず。


「「「いいなぁ………」」」


残された女子たちは1人を除き羨望の眼差しをしている。


「私も愛人様からゆっくりと……いえ!勢いよくキスをしてほしいですね!」


「勢いよくキスをするって何だよ?」


「例えるなら、ロケットエンペツみたいな」


「例えあってる?ロケットエンペツって。懐かしいな。てかロケットエンペツじゃなくてロケットだけでいいだろ。別に例えるなら」



「私はね~。まぁにゅっちょりキスをしてほしいな~」


「何?その気持ち悪い擬音は?」


「にゅっちょりはにゅっちょりだよ!にゅっちょり頭使ってやってね?」


「めんどくさい。めんどくさい。考えながらなんでしなきゃいけないんだよ。キスするだけでも大変なのに身体精神どっちも使うのマジでイカれてるだろ?」



「楽しいね!黒ひげデスゲームってこんなに楽しい遊びなんだね!」


「アリスが喜んでくれて私も嬉しいです。」



「……………」


アリス先輩は無邪気に楽しんでるわ。忍先輩も嬉しそうで何より………だけどぉ。


「よしっ!もう一回!私から次はいくよ!」


「ちょっと待ちな。雫さん?」


「うん?何ですか?香織さん?」


もうここのバチバチもめんどくさいし。


「まだ一度も刺してない人がいるでしょ?その人からに決まってるでしょ?」


「は~い!わたくし黒井一度も刺してないで~す!」


「ほら。それに晃太くんに忍先輩に進藤に乃蒼さん?だっけ?も刺してないじゃん。それが終わってからだよ。一巡もしてないんだよ?わかってる?馬鹿なの?」


「あ~、これはうっかり。馬鹿でしたね~!けど馬鹿でも可愛いからプラマイゼロですね~?」


あぁ…………バチバチしてる。バチバチしてる。


「とりあえず一巡するよ?まず……」


「はい!わたくしいきたいです!」


「じゃあ黒井さんからで、はい。黒井さん。届きます?」


「ご協力感謝します!香織さん!」


運転席に黒ひげ親父を近づける香織。いつの間にか剣が手に。黒井さんいつの間に……ちゃんと運転してる?運転出来てる?怖いんだけど………


「ではでは!えい!…………あら~ハズレでしたね~。残念です。では次の方~」


「残念ですね~。では、次は進藤。」


「…………」


「早く刺せ。」


「いや………」


「嫌なら私が選んであげた場所に刺す?」


「………っ!え………い………」


「ちぇ。残念。ハズレかよ。」


「ハズレか~。私も残念だわ~。」


獲物を狙うハンターの目をして見つめる百舌鳥先輩。進藤…………ビクビクするな。


「ではでは。次は忍せん……」


グサっ。


「早!」


「はて。考え無しに刺したほうが当たると聞いたのですが……」


「邪念があったのかもですね~。じゃあ次は晃太くん!」


「刺したら終わりな?」


「ココ刺して?」


「俺だけゲームが違う。」


「ココが当たりだと思うんだけど~。」


「だからゲームが違う。」


「じゃあそこ刺さないと強制キスね?」


「だからゲームが違うじゃん?はぁ………分かりましたよ。刺しますよ。刺しますよ。」


さよなら数分後の自分。


カチ。


「…………………ハズレた…………」


「クソガァ!!」


「………………」


そんな怪物にならなくても…………


「じゃあ最後。乃蒼さん、だっけ?乃蒼さん刺して終わりだね?」


「どこでもいいよ?どこでも当たらないところを………」


ザクっと突き刺したその剣は……


黒ひげの親父を


天高く飛び上げさせた。

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