第230話 ゆっくりやると逆にやりづらいって気づくのおせぇよ。
「ぷわぁ~!ポッキーゲーム楽しいね!さぁさぁ!皆もやっていこう!!」
ようやく離した唇から発せられた言葉はすごく満ち足りた声で満ち足りた顔をしている百舌鳥先輩からだった。
「……………」
横を見るともう屍と成り果てた進藤の姿が…顔は痩けて心なしか少し身体小さくなってないか?通常マ○オからミニマ○オくらいに、小さくなってないか?マジで。真面目に。
晃太が止めに入れば………入れれば………助かったか、いや。助かってないな。どうせ香織の制止がきたはずだ、だから………まぁ、その………御愁傷様です………としか言えねー。
呆然としながら進藤を見ている晃太を尻目に空気が悪い意味で変わるかな?と思った晃太だった、が。
「よし!」
「今すぐ!」
「早急に!」
「やるよ!」
馬鹿な女たちはもう止まる気はなかった。
止められない猛牛のように、赤いマントを見て突っ込む闘牛のように我先にと剣を奪いあう。
「じゃんけんとかしてるのはめんどくさい!もうこれは勝負!争い!闘い!なんだから!もう順番なんて待たない!私は先にいくよ!」
そう言って1番に刺したのは彗、黒ひげの中心、いわば心臓部を勢いよく刺した………が、
「クソッ!クソガ!もう一回d……」
ポンっと肩を叩いたかと思えばソファーに思いっきり身体をぶつける彗。いや、ぶつけられる彗。
「一回。一回ずつ。順番は守りましょう。ね?」
ね?とか言ってるクセに全く笑ってない香織。
「はいはい!じゃあ次私!えいやー!……ありゃあ………ハズレ?」
「では、私も!ふん。………あらら。ハズレ………フッフッフ、けどドキドキで面白いですね!」
雫、アリス先輩次いで失敗。次は………
「私ね。」
香織の番。
気づかれないように手を合わせ合掌する晃太。
ハズレハズレハズレハズレハズレ………
「キラッ。ここっ!」
刺した瞬間。それはスローに見えた。
スローに見えた。晃太には
黒ひげが飛んでいくのがスローに見えた……
走馬灯か?
「よっし!私ね!相手はもちろん。」
いうまでもないだろ、みたいに指さす。そしてこいこいっと指でアクションをする。もちろん。晃太に。
「逆らえませんよね……」
「王様だからね。」
「お前はいつでも王様だろ。」
「あ、違った。お嬢様だよ。いや、お姫様だよ!私は!」
「意味合いは一緒だろうが。」
このお姫様は扱いづらいわ。やっぱり。
「でポッキーゲームでしょ?ポッキーゲームするんでしょ?頼むから進藤みたいなのはやめて?」
「私はそんなの望んでない。私は。」
ポッキーを口にすると。
「私は晃太くんが1本丸々食べてきて私の唇に触れてくれるのがみたいの。」
「は?」
「だから、う。」
まるでキス待ちみたいにポッキーをこちらに向ける。
マジか。マジかよ。
いや、マジだよな………マジだよな………
周りの目もいてぇし………やるしかない。
ポキポキポキポキポキ………
ゆっくりゆっくり進んでいく。間違えた。ゆっくりやると逆にやりづらい。ミスった。
でもやるしか道はない。道はない。ゴールはもうそこしか。ゴールは香織の唇しかなかったのだから………
そしてそして彼女のピンクの綺麗な唇に……
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