第225話 考えても考えても頭の中はラビリンス

晃太はベンチに座り自販機で買った水を片手に考えていた。

ていうか、じーっと見つめる先には黒塗りのベンツが………

いや、おかしくない?サービスエリアに家族連れもたくさんいるよ。恋人、友達、仕事いっぱい車もあるよ。その中でも……ベンツって。黒塗りのベンツって。おかしいよ。異質だよ。てかよく停めるとこあったよね………普通ないでしょ?ベンツの横に普通のミニ車が停まってるよ。何か申し訳ないよ。なんかすいません。

て、のもあるだけど……


「この中にいる………好きな人は……この中に………」


降りる前、確かに聞こえたその言葉。

この中にいる?南 乃蒼の好きな人がこの9人の中にいる………だと?

水を飲みながら溜め息をつく。


「もし、それが聞き間違いじゃなかったら……めんどくさいことになるな………」


何故このグループに入ったのか、何故このグループじゃないといけなかったのか。その理由が好きな人がいるから、なら話がだいぶ簡単になってくる。

男嫌い、いや全般的に人間に興味のない南 乃蒼がこのグループに入りたかった理由が明白に分かる。

だが………誰だ?誰なんだ?好きな人物って?まぁどれにしても地獄ルート確定だけど。

忍先輩の場合、アリス先輩が何か学校の力全部使って南 乃蒼を退学とかにさせそう。


進藤の場合、百舌鳥先輩がまず進藤を脅し、その後得意のマスゴミパワーであることないこと大量にばらまきそう。


そして晃太の場合、香織はまず直接の殺意だろうし彗も直接の殺意だろうし………雫は…どうだろう…………一応友達だし友達の友情をとってほしいけども………


ともかくどのルートに行っても地獄行きは決まってる。男子も共に地獄行きが決まってる。というか、もう晃太はいいでしょ?って思う訳よ。自分でも。彼女が強引に出来たと思ったら次は愛人候補ができて、それが出来たと思ったら第2の彼女が出来て、しかもブラコン狂の姉まで来て………一応3人の中ではダントツで周りが狂いまくってるから。もう晃太はいいでしょ?てかもうモテたくない。全国の男子ごめんなさい。けど言わせて?もうモテたくない!


「ありゃ?晃太くん。何してるの?」


「あ?何って考え事………ってお前何買ってきた?」


声をかけてきたのは香織。その香織の手には………パンパンの袋が1つ。


「エコバック持ってくれば良かったよ~。5円かかってちょっとちょっぴり残念な気分!」


「エコバックとかどうでもいいけどよ……何だその荷物は………」


「色々だよ!色々!もしかしたらアリスのとこにあるかもしれないけど買ってきた!」


「…………お前はいいよな……気楽で。」


「何をぉ?気楽じゃないよ!私だって頭の中はいつでも晃太くんオンリーだよ!」


それがお気楽なんだよ、という言葉を飲み込んでまた晃太は買った水に口をつける。もう水はほとんどなかった。

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