第224話 この中にいる。

黒井さんの言う通り、王様ゲームやこーゆう罰ゲーム系、深夜にワイワイする系、深夜じゃないけど………には確かにその質問は王道に近かった。

好きな人は誰?もしくはいますか?

思春期真っ只中の高校生達にはめちゃくちゃクリーンヒットな話題………だけど、ここに乗ってる奴らは例外だらけ。

一応3カップルに愛人候補、彼女は私だと途中から割り込む女………ほとんどが誰かのことを好きでいる。迷惑な話だが好きでいる。ホント迷惑………


しかし、今番号を当てられた人物は。


「……………」


不思議そうに引いた箸を眺める彼女、

南 乃蒼はこの中で唯一誰も知らないはずだった。


「お、南さんですか!ズバリ好きな人はいますか?」


黒井さんのアナウンスに数秒遅れて反応する南。やっぱり不思議そうに首をひねりながら箸を眺める彼女。


「あら。いない感じですか?それは失礼なことを………」


「黒井!アンタは何を聞いてるのよ!」


「あ、なら私の好きな人伝えますね。私は嫁と娘の美月が好きですね~!あ、ちなみにテレビの中の人物だと齊藤○鳥が好きですねー。めちゃくちゃ顔小さいじゃないですか!しかもウチの娘の美月にそっくりで………」


「あ~もう!黒井!何をペチャクチャと!馬鹿なこと言ってるの!?」


「いや~、南さんが少し困惑してしまったので場を和まそうと。」


「アンタのお嫁さんと娘さんとのラブラブ話はいらないから!」


「え?ラブラブ話話しますよ?」


「いらないから!まだ家族皆でお風呂に入ってるとか毎日夜の営みしてるとか。今また新しい子供が出来て夜の営みをやめて今幸せの真っ只中だってこととか。」


「えー。いいな~。」

「羨ましいです。」

「毎日ってスゴいね!」

「もうすぐ私も赤ちゃん出来る予定、いや赤ちゃん出来るので同じですね!」


アリス先輩の出した言葉に皆声をあげる。

羨ましい羨ましいがほとんどだが………1人もう赤ちゃん出来ること確定してる人いるけど?少なくとも夫となるほうは納得はしないでしょうね。だって今白目向いて倒れてるから。泡吹いてるから。


「はい!はい!とりあえず今は王様ゲーム終わり!皆見て!サービスエリアについたよ!ここで少し休憩するから。トイレ行きたい人はトイレに。何か食べたいモノがあれば買ってきていいよ!時間は………15分だよ!よろしくね!」


皆から一旦割り箸を取り上げるアリス先輩。南の答えは無しってことか………

てかホントに遠足みたいじゃん。林間学校だけど………めちゃくちゃ緩いルールブックだけどさ。


「さ、皆出たい人は出てね!」


アリス先輩の声で一斉に出る皆。晃太は少し出遅れた。てかそんな急いでいく必要ないし。とりあえずトイレくらい行く………


「………この中にいる。………」


「うん?」


「私の………好きな人………この中に…いる…………」


晃太が降りる寸前に南 乃蒼が小さな声でそう話すのが………聞こえた。

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