第219話 愛人(自称)の隠し事

「次は……綾崎だね。」


バカップル一組乗せたリムジンは次の目的地まで。


「ここら辺ですかね。」


黒井さんがそう言うとそこには築100年くらいの木造のアパートが。


「え、何か間違えてない?」


「いえ。お嬢。ここで当たりです。」


「え、ここ?」


見上げる、ほどの高さはないアパートは分かる人には分かる例えをすればケチ芸人が昔長く住んでいたむ○み荘みたいな見た目、いやそれより少し汚い見た目をしていた。


「え、ここ?ここに………綾崎が………」


「わぁ~!!!!!」


ドデカイ声がアパートに響き渡りドタドタと階段を下りてくる女子。それは………


「お、おはようございます………あ、愛人様………」


ぎこちない笑みの綾崎 彗が………


「……………」


「……………」


「………とりあえず中で話そうか……」


「はい………」


とりあえず彗もリムジンにはビビらないんだな………オレだけポイントずれてるの?


「……………」


「綾崎。何飲む?」


「え~………麦茶で…………」


麦茶を受け取った彗は一口、いや一口がほとんどガブ飲みで飲み、半分くらいまで飲み干し……晃太を見つめる。質問を待ってるようだ。残酷だが………気になるから聞くしかない。


「あれ………あの家。お前の家?」


「………うん。てか……はい。」


「…………お前金無いの?」


「違います!違います!理由があるんです!」


「理由?」


「実は………私独り暮らしをはじめようと思ってた時に偶然愛人様、いや晃太くんに出会って………これは運命だ。これは神がくれた最高のプレゼントだと。」


「で?」


「で。そこから私はお金を貯めようと頑張ったんです。愛人様との結婚生活を夢見て。そのために必要じゃないものは捨てていこうと思い、私は」


「住居を捨てたと………」


「はい………これだけはバレたくなかったんですが………もう気がついた時にはリムジンが………」


下を向く彗………

バレたくなかったのがめちゃくちゃ分かる。


「………彗。」


「………はい………」


「別に俺はひいてない。」


「逆に少し株が上がった。お前の。」


「え?」


「人のためにそこまでするのかと、スゲェなって。本気で思った。」


「ホント……に?」


「嘘はつかない。」


「晃太くん!」


「だけど、今すぐ引っ越しはしろ。もう少しいい場所に。結婚とか出来ないんだから。」


「はい!結婚したときに最低限愛人様が入れる部屋にします!」


「だから結婚はむ」


「多重結婚ですか?お客さん?」


心臓をつくような鋭い言葉。


「………かお………」


「コテージ。覚えててね?」


にこりと笑う顔はこれから起こるめんどくさいことの引き金にはちょうど良かった。

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