第216話 普段キッチリしてる人がボケるとちょっと心配になる。

「うわ~!フワフワだぁ!」


リムジンに乗り込みピョンピョン跳ねる香織、うん。座るところめっちゃ………フワフワ。こんなフワフワなヤツ座ったことない。これがよく言う人を駄目にするクッションというヤツか………いや、違うか………


「座った?ならレッツゴー!」


アリス先輩の号令で走り出すリムジン。素晴らしい。法定速度ピッタリで走ってるよ。


「あ、説明しとくね。この運転してる人は黒井、私の執事みたいなものだよ!」


「黒井です。お嬢がいつもお世話に………」


「黒井!固い!言葉が固いから!」


「ですが………」


「あと!お嬢じゃないから!お嬢って呼ばないでよ!」


「いつもお嬢はお嬢じゃないですか。」


「それは普段の話でしょ?今は友達がいるの!」


「うっ………あのお嬢に友達が………」


前を向いたままつーっと一筋の涙を見せる黒井さん。見た目はピアス一つ開いてて銀色の髪でいかついけど………アリス先輩のことかなり知ってて心配してたみたいだし、悪い人ではないのかな?


「それに………彼氏さんまで………」


「うん?彼氏?」


「おはよう。晃太。」


「うわぁ!」


いきなり肩にポンっと手を置かれビビる晃太。そこには………


「忍先輩………?」


「何?お化けでも見たような反応して?」


「いや………あのいました?」


「ずっといたよ?」

「ずっといたよ?晃太くん。」

「はじめに忍は拾ってきたからね!やっぱり彼氏だし。」


フンッと胸を張るアリス先輩………


ビビった………いないと思ってたから……怖かった……


「とりあえずゆっくりとくつろごう。」


「え。ゴロゴロしてもいい?」


「いいよぉ!」


「周りのこのキラキラとか見てもいい?」


「いいよぉ!」


「え、キラキラ欲しいんだけど。くれない?」


「いいよぉ!いいよぉ!」


いや、シートベルトは………?

ていうかめっちゃ香織がめつくない?何かキラキラした石貰おうとしてない?アリス先輩も適当に言ってない?


「晃太。」


「あ、は、は、はい。」


いきなり低温ボイスで耳元で囁かれると耳溶けるのよ。忍先輩、顔も声もいいから。


「晃太、何歳だっけ?」


「え?17です。」


「あ~………俺は18。」


「あ、はい。」


「……………」

「……………」


え、何この沈黙?何?何なの?


「このリムジン、ドリンクもあるんだよ。」


忍先輩の指差す先に冷蔵庫らしきものが。


「あ、そうなんすね………」


「酒飲みたかったね。2人で。」


「そうですね………って。無理っすよ!無理無理!18からは酒飲めないですから!」


「あ、そっか。18からはパチンコとタバコだけか。」


「え~………パチンコは……知らないですけどタバコはダメですよ!」


え、ボケてる?忍先輩が?いや、まさか。ただのミスだ……


「あ、忍も楽しみなんだね!口が達者だし、めっちゃボケてるじゃん!」


「そうだね。楽しみだからね。」


あ、マジでボケてたのかよ………分かりづらいテンションのアップダウンだな……

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