第211話 台風の目は一年のダークホース

林間学校のグループの班決めは結構簡単だ。

貼り出す場所、いわば皆が見る掲示板みたいなところに現在決まっているメンバーを書いて貼っておく。その紙が10人揃えば完了、または揃わずまばらな場合は少ないとこと少ないところが合体して完了。そういうスタイル、そういう形式である。


「さぁ~て!」


紙をピンで刺し汗を拭う仕草を見せる、汗何か一粒もかいてねーだろうが。香織。


「………にしてもエグい面子だな。」


「沢 香織 社 晃太 百舌鳥 愛梨 進藤 優 百合愛アリス 五十嵐 忍 の6人だね!」


「面子濃いわ………」


「それは晃太くんもキャラが濃いって認めてるってことだよ?」


「オレはツッコミ役なんだよ。ツッコミ役、あの中に1人もいねーだろ?」


「忍先輩と進藤がいるじゃん?」


「忍先輩はアリス先輩によって変わるし、進藤はもう虫の息だろ?だから無理だろ。」


「あ~、確かにっ!」


「認められるとキツイな………改めて」


この濃い面子にまだ増えるんだろ?はぁ……めんどくさ……


「あ~!!アンタら!」


大声を出すキンキン声の先にいるのは、


「彗………」


「愛人様!何で病院でほっといたの?酷いよ!目を開けたら天井は真っ白で周りは白衣ばっかりで!びっくりしたんだから!」


「ご、ごめん?」

「謝る必要ないでしょ?こんな奴に。」


「酷い奴よね?香織。まぁ、保険証あったからまだマシだけどね?」


「そこじゃなくない?」


「それにしてもその紙!林間学校のやつよね?」


「あぁ………無理に来なくてもい」


「1、2、3……私が7番目ね!」


貼り出した紙にすぐさま名前を書く。

やっぱり制御は無理か。


「あ、いたいた。センパ~イ!こうくんセンパ~イ!」


また声が聞こえる。さらにその声は色々と聞き馴染みのない言葉が融合していた。


「雫………」


「林間学校のメンバー、まだ空いてますよね?もちろん?じゃあ私入りますよ?あとお姉さまも特別に書いときましょ!バレないでしょ?お姉さまには後から私が伝えますから!はいはい!」


またまた貼り出した紙にすぐさま名前を書く雫。これで8、9人目も埋まった。


「沢 香織 社 晃太 百舌鳥 愛梨 進藤 優 百合愛アリス 五十嵐 忍 綾崎 彗 幸山 雫 社 心音」


上手く行き過ぎなくらいピッタリとジャストでメンバーが揃った。


「よしっ!おっけ!これで先生に渡してく」


ウキウキで紙を外そうとした香織の手を掴んだのは、


「ちょっと………待って……くれる?」


「誰?アンタ?」


見たことない長身でボーイッシュな女子だった。


「乃蒼。どうしたの?」


「のあ?」


「南 乃蒼(みなみ のあ)、私の友達!」

「雫の……親友……一応……してる」


「一応って何よ!」


雫が少しムキーとなるが乃蒼はお構い無し。


「香織……先輩でしたっけ?」


「え?」


「アンタの名前。」


「そうだけど?」


「じゃあこれが……林間学校の……」


「何よ?アンタ?」


「バッサリ……言うよ……私も……一緒のコテージに……行く」


「え。」

「え。」

「えー!乃蒼も?何で?」

「……気分?まぁ、1枠空いてるし……別にいいよね?先輩方?」


この長身美少女を否定する要素は見つからなかった。そのため……

10人目。南 乃蒼 一年、彼女が入ることとなった。



この時は知らなかった。

この長身美少女がこのコテージを一番荒らす台風の目になるなんて。誰も知らなかった。

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