第183話 多分。大丈夫。
「……………でけぇ病院だな。」
明日の光が来た。それだけでも歓喜の雄叫びをあげたかったがとりあえず抑えながら、進藤がライムで送ってきた病院へと脚を運ぶ。
「色んな病気とかに対応してるらしいからね~。赤ちゃんいるか確認するには一番いい場所だなーとは思うね。」
いつの間にはスマホで病院のホームページを読んでいた香織がそう話す。
「いいな~。私も検査してほしかったな~。ちらっ。」
「ちらっ、じゃねーよ。検査したとこで何も出やしないからな?」
「分かんないじゃん。もう新たな息吹が目覚めてるかもしれないでしょ?」
「そうだよ!」
お腹を擦りながら………
「女の子ならキラリとか………男の子なら………何がいいかな?」
「私は男の子の名前だけ考えてますよ?晃太の晃をとって晃助、いい名前………」
「ちょっと待て。」
「うん?どうしたの?」
「どうかしました?」
「どうかしました?じゃなくて………
彗、お前いつから来た?」
右手はずっとぎゅーっと香織が握っているが反対、左手、を吹っ飛ばして左サイドに引っ付いて来たのは。
「え?さっきからいましたよ?愛人様?」
綾崎だった。
「いきなり引っ付くな。子泣きジジィかお前は。」
「何を言ってるんですか!私は子泣きジジィじゃないですよ!私は愛人。あ い じ ん」
「非公式のな?」
愛人、という立場に落ち着いたのはもう安心出来るが本気で愛人とか言われたら流石に嫌だし、まず人がいるところで大々的に言われるのは流石にやめてほしい。
「てかやっぱりお前も来るんだな?」
「勿論ですよ!私も晃太様の愛人なんですから。」
「様やめろ。で愛人もやめろ。」
「というかいきなり来てないですよ?ちゃんとライムに送りましたよ?愛人様スマホは?」
「そー言えばそーだね?晃太くんスマホは?進藤からのライムだって私のライムにも来たから来れたものの。」
「え?えーっと…………」
そういえば昨日の姉と雫に襲われ逃げてきた時にスマホは自分の部屋に置きっぱなしにしたまんまだった。
「忘れてきたかもな。自分の家に。アハハ。」
「そうなの?じゃあ取りに行く?」
「嫌、行かなくて大丈夫だから。マジで。進藤ところへ行こ?」
「うん?どうしたの?そんなに焦って?あ、もしかして失くしたとか?なら大丈夫!私にはGPS機能がついてるから……」
「あ~。大丈夫大丈夫!別に見なくていいから!大丈夫!大丈夫!」
「ポチっとにゃ。………あれ?ポチっとにゃ。ポチっとにゃ。ポチっとにゃ。ポチっとにゃ。」
「ど、どうした?」
香織が不思議そうな顔をしている。
「GPSが使えない。何処にあるか分かんない。」
「へ?」
水に落とした訳でも火に炙った訳でもないのにGPSが機能しない。
「……………大丈夫だって。多分充電きれてんだよ。多分。」
「そう?そうかな?」
「大丈夫。大丈夫だから。早く進藤のとこ行こ?」
意見をたちきるように無理矢理進む晃太。
大丈夫だ。充電きれてんだよ。多分。
何も今日は起こりはしない。多分。
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