第178話 ここは地獄かもしれない
嫌なことが起きたら記憶がぶっ飛ぶ、ということが、そんなことはない。しっかりと記憶は残り目も耳も嫌なほど聞こえている。
そしてそれは目の前の姉さんの姿もばっちり認識できている。
「……………」
何故か鍵をくるくるしながら笑っている姉さんは無言で立ちこちらを見つめる。そんな中
「あ、貴女がこーくんのお姉さんですか!ゴホンっ!私!雫って言います!雫、雫だよ!上の名前はまぁ変わるだろうから雫だけ覚えてください!」
自分の胸をもまさながらそう自己紹介する雫。油に大量の水を注いでいるのと一緒だから………
「………雫?」
姉さんが感情なくそう呟く。
「そうです!雫です!雫と言います!こーくんとはカップ……」
「嘘をつくな!バカ野郎!」
「こーちゃん。」
「あ、は、はい…………」
「何で胸を、おっぱいを揉んでるの?」
「いや、いや………コイツが無理矢理触らしてきて……」
「襲われましたっ」
「お前なぁ!」
マジで黙れよ!ふざけんなよ!マジで止めてくれ!
「2人はカップル?恋人?」
「はい!そうで」
「ふざけんなよ!マジで!黙れ!カップルでも恋人でもねーよ!俺はお前とそんな関係になったつもりないから!」
「まぁまぁ。恥ずかしがらないでよ?」
「ふざけんなよ!」
コイツのペースで話せば全てが終わる……
主導権を自分に戻さねーと。
「姉さん!全部見たこと!今見たことは夢だから消して!」
頬を思いっきり引っ張る姉さん……
「痛い。痛いよ?」
「……」
まるで餅のように伸ばす姉さんの頬。
躊躇は全くなかった。
目は死んでいた。
「ともかく後でね!後でしっかり説明するから……一旦姉さんは頭を冷やして………」
「下にビールあったっけ?」
「え?」
「ビール持ってくる。」
「いや、姉さん!ビール飲まないじゃん…」
「でも飲む。だって飲まないとやっていけないから………」
「いや、だから後でね!後でしっかり説明するから!頼むからお願い!一旦降りて……」
ガチャ。
その音はしっかりと聞こえた。音が耳に残る音が………
「え?」
「これでこの空間は私が開けない限り閉ざされたまま」
「ちょっと待って……」
「じっくり一から説明してもらうよ?じゃあないと………」
姉さんの懐からは………
「殺しちゃうぞ?」
不気味に笑う姉さん。
「………」
何でビールはないのに大きな包丁はあるわけ?
おかしいよ………おかしいよ………
「ともかくまずは、こーちゃん。おっぱいから手を退けようか?じゃないと手首を切り裂くぞ?」
脅迫だよ………怖いよ。この人……
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