第161話 彼女は一目を潜って
「金曜日は病院って言っとくべきじゃない?」
「何で?」
ホームルームも終わり皆が帰りの支度を始めるなか香織がそんなことを言う。
「だって休むんだし。」
「もう俺ら普通に授業飛ばすことなんて当たり前になってきただろ?そんな奴等が今更言っても」
「意味ないですよね?」
「んでお前はいつ背中に引っ付いた?彗?」
「背中がらあきだったんでつい。」
「ついじゃねーよ。何つい背中に引っ付いてんだ?」
山があったから登るみたいな、うん。何にもカッコよくねーけど。
「あとお前もついてくんの?病院?」
「え、進藤は私たち3人に言ったのではないんですか?」
「少なくとも俺には言ってたよ。お前らは知らんけど。」
「私も愛梨ちゃんの件には一枚、二枚噛んでるから行かなきゃだし。」
「なら愛人の私も行かないと。」
「非公認だし意味がわからないんだわ。行く。意味が。」
「何を言ってるんですか?愛人様。愛人にも身籠る権利はあるんですよ?つまりこれはいわゆるシミュレーションです!」
「は?」
「綾崎と同じ意見なのはちょっと嫌だけどシミュレーションは確かに一理あるよ。シミュレーションは大事だからね。ギリギリまで私もうけたい!って頼んだんだけど無理でさぁ~。まぁ妊娠してるかどうか知ることは出来なくても雰囲気は味わえるから。行きたいんだよね!」
「お前ら………病院をテーマパークか何かと勘違いしてないか?」
「テーマパークみたいなもんだよ!」
「私こうたんの精子欲しいから!」
「私もです!愛人様!」
「うん。とりあえず黙ろうか。で後で一発殴ろうか。お前ら。」
クラスメイトの目が痛いから。もう慣れたけど。慣れたらダメだけどな。
「とりあえず帰るからな。」
「今日はまぁいいよ。」
「今日はまぁってなんだよ?」
「今日は久々に帰らせてあげる。」
「お前に何で俺の帰りの権利があるわけ?」
「彼女だから。」
「こわ~い。彼女ってそんな権限あんだ~」
もちろんないが。
「愛人様。私の家に来ますか?」
「何で行くと思った?何でお前の家に行く必要があるんだよ?」
「ほら。紹介ですよ!家族に
私の愛人です!って。」
「その言葉でそそられる訳ないだろ?バカか。」
親もどう反応したらいいか悩むだろ。
「とりあえず今日は帰るぞ。」
「うん。じゃあ!ついたらライムくださいな!」
「何でお前に……」
「私は愛人様にGPSつけてませんから。いつ何処で悪いことしてるか分からないからです。」
「悪いことしないし……まずお前に報告する義理があるのか?」
愛人仮自称に伝える必要とは?
で香織はドヤ顔するなよ。
「ともかく帰るからな。」
「バイバイ!」
「さよなら!愛人様!」
シーンとする場。
あ~、久々になんか静かというモノを感じたわ。
「さぁ、帰ろ………」
「あ、あっ………身長足らない………」
「え?」
後ろから誰かの声が聞こえる。それは
「う~ん。ミニサイズの弊害だね。こりゃ。」
「雫ちゃん………?」
今日も一日は長いようだ。
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