第159話 ピュアピュアの裏には。

「雫ちゃん。」


「あ、は、は、は、はい!」


チョンチョンって指でつついただけなんだけどな………そんなビビらなくても………


「あの、手紙読んだよ。」


一気に真っ赤になる雫ちゃん。


「な、な、なんでいちいち宣言するんですか!は、恥ずかしいじゃないですか!」


うん。こんな小さなことで真っ赤になる、うん。この子はホントにピュアな人間だな。

だからこそ。


「気持ちは嬉しいよ?だけど………」


だからこそ。あの猛獣 怪獣2人に襲われてほしくない。だからきっちり断らないと。


「社さん、いや晃太さんは優しいですよね?」


「へ?」


「だって自分が刺されたことを誰にも言わずあの人を助けて挙げ句の果てに愛人とか言ってほっておいてるんでしょ?」


「いや、それは………」


「しかも彼女とか言ってるあの人も本当はそんなに好きとかいう感情がないんでしょ?」


「うっ…………」


ドツボをつかれた。


「けど付き合ってる。彼女の思いが重いから。彼女以上はいないと感じているから…」


「雫ちゃん?」


立ち上がり宣言する。


「私は一からスタートすべきだと思います!一からリセットしてスタート。リスタートですね?リスタートして一度ゼロに戻して考えた方がいいと思います!そうすれば自ずと答えは出るはずです。」


「いや、あのね……雫ちゃん?一応俺彼女持ち………」


「それも無理やりですよね?一週間の間に調べました。クラスメイトの方に聞いたりして。」


何勝手にプライベートをばらしてるのかな?クラスメイト達。


「無理やり襲われてその流れで付き合った、らしいじゃないですか。」


「いや、色々あったんよ?色々あったんだけどね………」


「色々も強制的なことが多くて自分の意志が揺らぐことが多かったのでは?」


「う。」


図星をつかれ何も言えない。


「だから一回ゼロからやり直しましょ?

ゼロから!」


何か異世界アニメの名シーンみたいだけど…


「ゼロからって何をする………」


「一回別れてください。」


「はい?」


「彼女仮さんと別れてください。そしてフリーな状態で…………」



「「みぃつけたぁ~」」


暴走気味の雫ちゃんを止めたのは階段の上からギロリと睨む香織と彗だった。


「香織………彗………」


「こんなところで何してるのかな?」

「愛人様?どうしたんですか?」


目が死んどる。ヤバい、今の奴等に暴走気味の雫ちゃんを与えたら………


「え、せ、せ、先輩方………ど、どうしたんですか?」


うん?


「どうしたもこうしたもないわよ。いきなりこうたんが逃げ出したと思ったら何かアンタを連れて逃げ出したとか聞いて」


「あ、わ、わ、私も…急に連れてこられて……あ、もしかしてこのメッセージカードのことですか?」


「うん?」

「う?」


あれ?メッセージカードは俺のズボンに入ってる………入ってる………え、あれは一体…


「このメッセージカードには感謝の気持ちしか書いてないですよ?ほら。」


階段から降りてきた2人が中身を確認する。


「確かに……」

「確かにです。」


「もしかしてお二人は私が社先輩を好きになったとか思って急いできましたか?まさかまさか!そんな彼氏いる方にそんな手は出しませんよ!」


「…………そう。」

「……………ふ~ん。」


今目の前で起きてる現状が理解できない。

雫ちゃんの態度が一変してるし……さっきまでの彼女は一体………


「先輩方すみませんでした。けどあと少しだけ感謝を伝えたいので先に帰ってもらって もいいですか?すぐ社先輩お返ししますから。」


「………まぁ、感謝だけなら………早く帰ってきてね?」


そう言うと2人は去っていった。


静かになった階段の裏。

クルリと回った彼女は、


「そのままでいててください。」


「はい?何を?」


そう言うと額に唇を当て………


「え?」


「また会いましょ?GPS解除の方法も知ってますし。ライム入れといてくださいね?晃太さん!」


そう言うとタッタっと階段をかけていった。

数秒後バタリと倒れる晃太の頭の中では

またクセの強い奴が出てきたと頭を抱えたくなっていた。

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