第143話 強攻策のそのさきの強攻策

助けにきたよ。

そう言って現れたのは


「香織?」


「大丈夫…そうだね。ごめんね。遅くなって。」


笑顔でドアの残骸の上に足を乗せる香織の姿。


いっぱい聞きたいことはある……が。


「チッ!」


近くで超でかい音で舌打ちをする彗に一拍遅れた。


「何でアンタが………何でアンタがここにいるのよ?」


「え~?」


「私は1万円使ってタクシーで逃げたんだよ。1万円のタクシーの距離は結構な逃走経路になったはずだろ?なのに何でこんなすぐに特定することが出来るんだよ?」


語尾が荒い彗だが確かにその通りだ。

1万円でタクシーで誘拐されその後こっちも場所分かんないとこに来たのに何でこんなにも早くしかもこんなピッタリとドンピシャで当てることが出来るんだよ?


「綾崎さん。私さぁ。今日あなたが何かやらかすんじゃないかとずっと脳裏にはよぎっていたの。でクレープに多分下剤か何か入れたんでしょ?そこには引っ掛かってマジで悔しい。けど、爪が甘かったね。」


「何?」


「こうたんのスマホ。あなたが持ってるんでしょ?一回出してみなさい。」


「スマホ?スマホが一体……」


彗がスマホを取り出すと………


ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー


エンドレスに流れ続ける警戒音のようなモノ………


「何………これ…………」


シワを寄せる彗に笑顔で香織は答える。


「GPSだよ。」


「GPS?」


「こうたんがもし悪いことしたらダメだと思って。あ、ダメなことって言うのは他の女と会うことね?それを防ぐために私が作ってこうたんが寝てる間にスマホに埋め込んだんだよ!」


「「……………」」


これは勝手にスマホをいじられていたことを怒ればいいのか、スマホにGPSを勝手に入れ込まれていたことに恐怖すればいいのか、スマホのGPSを作れる香織の頭を褒めるべきなのか…………色々と難しい………


「じ、GPSで場所がわかってもこのフロアの何処に私たちがいるかまではわからないはず……」


「さっきここのオーナーに聞いた。若い2人組がいなかったか来なかったか?って。10秒以内に言わないとドアを吹っ飛ばすって」


「脅しじゃねーか。」


「でこの部屋がその若い2人特徴を伝えたらばっちり当たってたからドアを吹っ飛ばしてきた訳。」


「ドアを吹っ飛ばす必要はないよな?」


「だって10秒以内じゃなかったから。」


「教えてくれただけで充分だろ……」


後で謝ろ……誠心誠意。


「ということで綾崎。アンタの負けよ?早くこうたんを返しなさい。」


「…………っ」


唇を噛む彗。


「アンタの強攻策ももう終わりよ。だから早く………」



「近づくなっ!!」


大きな声。その声を発したのは…………


「晃太くんがどうなってもいいのか!?」


自分の衣服を全て脱ぎ捨て晃太の顔面に胸を押し付ける彗の姿だった。


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