第96話 銃の引き金は簡単には引けない。だが引いたらもう後には退けない。

「なにぃ~?話ってなにぃ~?」


「話はするんですけど………その前に……」


「その前に?」


「あの………手に持ってるケーキ用のナイフ置いてくれませんか?」


百舌鳥先輩は喉元にナイフをむけるようにこちらにフラフラと近づいてくる。


「だって~ゆーくん敬語崩さないから~」


「いや、だって先輩ですし………」


「先輩の前に恋人!分かる?あんだーすたん?ゆのーせん?」


「いや、そこは譲れないというか………守らないといけない場所かな……っと」


「そっかそっか。ならゆーくん。死のうか?」


「何でそーなるんですか!」


「先輩、年上、年下のカップルなんて世の中ごまんといる、いやじゅうまんと、いやひゃくまんといる!」


「そのごまんじゃない気がしますけど……」


「その中で恋人なのに敬語とか恋人なのに恋人っぽいことしてないとか色々私たちはおかしすぎるの。だからナイフ突き刺す。」


「理論が無茶苦茶です!ちょっと待ってください!俺の話も聞いてください!聞いてから判断してください!」


「う~ん。仕方ないな~。優しい私だから一度はチャンスをあげる。」


「チャンス?」


「はい。どうぞ。私を納得させられる理由を言ってみなされ。」


「……………」


とりあえず一度は話すチャンスを得た。だからこれに全てを賭けるつもりでやるしかない。


「先輩に」


「愛梨。」


「あ、愛梨に告白された時俺は百舌鳥、いや愛梨のことを全く知らないただの生徒だったの。何か小さい子だな………くらいのイメージしかなかった。で何か流れで付き合ったじゃん?」


「流れで付き合ったというか私が無理矢理オッケーだよね?で押しきったんだけどね!」


「た、確かに押しきられて今になるけど……その時俺は決めたんだ。俺はこの人を大切にしようと。」


「キャ!大切にって!」


「大切にする。大切にする。だから

一年間は手を出さないでいようと、そう固く心に決めたんだ。」


「は?」


百舌鳥先輩はナイフを落とす。


「一年間?」


「やっぱり並大抵のカップルってのは2.3ヶ月で別れるモノ。ならそれを防ぐため一年間何もせずしてその後カップルらしいことをするのが一番………」


進藤の言葉を聞いた百舌鳥先輩は鞄の中を漁り始めた。そして…………


「あ、聞こえる?聞こえる?香織ちゃん?」


「か、香織……ちゃん?」


「私やっぱり作戦とか考えてたけど無駄なことだと分かったよ。」


「せ、先輩?な、何を……」


「私、ヤるね?


私、百舌鳥 愛梨と進藤 優はここでセックスをする。んじゃ、そういうことだから。じゃあ。また60分後に………」


そう言って鞄に入っていた盗聴機を握り潰した。




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