第92話 猛進驀進百舌鳥。
「え~と2000円で。あ、2000円でいいです。おつりください。」
「おい、お前何普通に買い物してんだよ?今はそーゆー場面じゃねーだろ?」
「代理で買い物してるんだよ?必要なことでしょ?あ、レシートに進藤って書いといてください!強めの文字で。いや、赤文字で!何か血みたいにおどろおどろしく書いといてください!」
「何にお前必要ないこと店の人に指示してんだ!」
「あ、こんな感じでいいですか?もっとおどろおどろしいほうがいいですか?」
「あ、こんな感じです!あやめさん素晴らしいですね!」
「何店の人ものってるんだよ!あやめ……さんでしたか?のらないほうがいいですよ…」
「いや面白そうな現場を見たんで。」
「はい?」
「お客さん名前は?」
「香織だよ!」
「香織か~!ライム交換しよ!面白そうな現場を見てワクワクしたから後でまたその後のこと教えて?今はまだバイト中だからさ。」
ケータイ片手に香織と交換しながらあやめは言う。
「棘 菖蒲(いばら あやめ)?いい名前だね!何かどっかの戦士みたいじゃん?」
「棘って名前がでしょ?よく言われる。香織はいいね!女の子!って名前で?」
「菖蒲もそうでしょ?可愛い名前じゃん?」
「可愛い?どちらかと言うと綺麗な名前って言われることが多いかな?」
「あ~!確かに菖蒲綺麗な顔してるもんね?え?大学生?」
「違うよ。高校生。2年だよ?」
「え、同い年じゃん!もっと上かと思った!いい意味で!」
「ありがと!よく言われる。彼氏にも。」
「彼氏いるんだ!え、どこ高?」
「あ~東倭高校だよ。」
「あ~、ひがやま!結構頭いいとこじゃん!菖蒲頭いいんだ!」
「まぁ~ね。香織はどここ」
「もう良くないか?二人とも!」
井戸端会議をずーっと続ける彼女らにどこでメスを入れるか迷ったが………今しかなかったわ……
「どしたの?彼氏さん?彼氏さん名前は?」
「え、晃太だけど………」
「晃太さんか~。覚えた。どーする?ライム交換する?」
「いやその前に貴方バイト中だよね?そんな呑気に話してていい訳?」
「大丈夫大丈夫!見てみ。店内。」
「あ?」
菖蒲が周りを指さす。そこには………
皆突然起きた百舌鳥先輩の猛攻に唖然呆然とし固まっていた。
「大丈夫。ここ以外周りは固まってるから。それにここのバイト緩いからね?怒られないよ~!」
「だからって………」
「まぁ、でも見失うと面白そうな話が失くなりそうだから香織また今度時間つくって話そ?」
「いいよ~!お互いの彼氏も呼んでね!」
「それアリ!めちゃいい!また連絡するよ!」
「りょ!じゃあこうたん行こうか!」
「……………」
コイツコミュ力の塊というかホントに人の懐に入るのが上手いよな………
「先輩!先輩!先輩!止まってください!」
一方こちらは百舌鳥サイド。
一反もめんのように力なくヒラヒラと動く進藤は猪のように走る彼女にもうされるがままだった。
「どこに向かう……っぱ!どこにいくつもりなんですか……」
「…………香織ちゃんから言われた。」
「はい?」
「最終手段はこれだって。」
「はい?何を言って……」
猪のように猛進した彼女はある建物の前で止まった。
そこは………
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!百舌鳥せんぱ」
「愛梨!そして止まらないから。」
力が入らないくらい思い切り引っ張られて入った場所は
ホテル。
香織と晃太も進化したあのホテルだった。
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