第89話 やるときはやる女。
「10分経ったでしょう!大丈夫!」
百舌鳥先輩の膝から頭を上げる進藤。
「ほら見ろ!俺だって出来るから!舐めんなよ!」
「進藤くん?」
「え?」
「鼻………服…………」
「え?」
そう言われて下を見ると………
ずぶ濡れの服にボタボタと………鼻から血が………
鼻血がまるで滝のように流れ服に大量につく。
「いや………マジかよ………」
「進藤は何であんなにヘタレなの?」
「いや………知らない………」
晃太も初めて見る彼の姿がそこにはあった。
成績も一定して優秀でスポーツも出来て顔もそこそこイケメンの彼が………
まさか好きな人の前ではこんなに壊れているとは………
「てか進藤は何で付き合ってるって言えてるの?逆に?」
「俺に聞くな。俺に。」
「親友として知ってることがあるでしょ?」
「ねーから。ねーからひいてるんだよ……」
確かに何でこんなヘタレなら付き合うなんて言えたのだろうか。確か告白したのは百舌鳥先輩だったはずだけど………
それでも断れたはずだし………まず、
本当に進藤は百舌鳥先輩のことが好きなのか?
それすら疑わしくなってきた。
「まぁ、とにかく10分膝枕は達成したから次の指令だね。」
「指令の前に、お前さ………進藤の服を買いにいかせてやってくれ。」
「え?」
「いや、お前だって分かるだろ?べちゃくちゃで血まみれの服で流石にデート続行不可能だろ?」
「う~ん………私の作戦に少しズレが出ちゃうな~、う~ん………あ、じゃあこうたんが私にキスしてくれたらいいよ!」
「何で俺が?」
「こうたんがお願いしたんじゃん?そりゃこうたんが行動で示さなきゃ!」
「…………………はぁ…………わかったよ…」
「交渉成立だね!なら………」
「ちょっと待て。香織俺にも打たせろ。」
ライム♪
「あ、香織ちゃんからだ。次の指令かな?」
もうコイツの言うこと聞くの嫌なんだけど…
「え~と…」
うちのダーリンが進藤の服があまりにも酷いから近くの服屋に入って服を買ってこいとの優しい言葉をもらったので早く買ってこい。
「だって……」
「……………」
アイツマジで何様気取り……
「あ、まだ文章続いてた……」
P.S.晃太
この要求のために俺は香織にキスをしなきゃいけないようになってるからありがたく行けよ?
「だって……」
「晃太…」
何か………マジで悪い…………
「じゃあ近い服屋に行こうか………」
「ですね……」
「あ、ここでいいんじゃない?」
「そうですね。」
すぐ近くにポップな服が並ぶ店があった。どちらかと言うと女子向けでは?と思うがTシャツがあるからそれでまぁ………
「いらっしゃいまー」
やっぱりそうじゃん。女の人多い。あとカップルも多い………これは早く何でもいいから選んで出ないと………
よしっ。じゃあ……近くのこのTシャツを…
「待って。それよりもこっちのほうが可愛くない?」
「いや、可愛さとか求めてないんで……」
「せ、せっかくのデートなんだからしっかりしたヤツでデートしたいじゃん?」
「そうだとしても俺はこの空間に耐えられないです………」
「2分、いや3分待ってよ?そしたらいいモノ見つけられるから……あ、これも可愛い。あ、これも……」
「……………」
百舌鳥先輩には悪いがここは強行突破させてもらう……
「すいません。これで。試着してきます。」
少しプクっと顔をしてたけど……百舌鳥先輩には悪いけど試着室にいく。
ごめんなさいこの空気に耐えられないから…シャッ………っと小さな試着室に入った進藤は服を着ようと前を向くと……
そこには百舌鳥先輩が。
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