第75話 橋を叩いて渡るが叩きすぎて割れたら意味がない。

「え、それって…………」


「え?見えない?これ分かるでしょ?」


ジャラジャラ音をたてながら進藤の前で見せつける香織。


「て、手錠?」


「正解正解大正解~!手錠ですっ!でわ!」


「でわ!じゃないよ!お、おい!何をナチュラルに手に引っかけようとしてんだ!」


香織の手錠攻撃を避けた進藤。スゲー。俺なら完全に詰んでるわ。


「え?手錠はかけるモノでしょ?」


「悪い人にはね?悪人にはね?普段生きててかけないよね!手錠は!」


「かけるよ!かけるよね?博士。……博士?」


………あ、博士俺か。毎回忘れる。


「あ~まぁ人それぞれじゃないかな。」


「そうかな?私と博士は一回手錠プレイしたから普通かな~って。」


「え、晃太………お前……そんな上級なことして………」


「いた~い!!何故頭を叩くの!博士!」


「したことないだろ?嘘はいけないよな?センセ?」


「え、したことないっけ?」


「したことないよなぁ?」


「………。あ。そうか!分かった!夢の中でしたんだ!夢の中で2人仲良く手錠プレイしてたんだった!うっかりうっかり………」


普段なら

お前何を夢の中で想像してんねん!アホか!あと手錠プレイってなんやねん!意味分からんやろ!

と怒濤のツッコミをするところだったが……

今香織大砲は進藤、百舌鳥ペアに向いてるので被弾を避けるためノータッチで。


「とりあえず、手錠するから手を出して。」


「なんで!何で出さないといけないの?意味分からないんだけど?」


「え、手を繋いだことないからじゃあ手錠したら手を繋がざるを得ないかなって!」


「そんな自信満々に言う台詞かな!色々思考回路バグってるよ。香織ちゃん。」


言ってくれ。言ってくれ。俺もそれはそう思うから。思考回路バグかハッキングされてるんだよ。コイツ。


「え、手錠は嫌だ?」


「嫌とかじゃなくて普通しないでしょ?」


「じゃあ普通に。手を繋いでください。百舌鳥ちゃんと。はい。どーぞ。」


百舌鳥先輩の手を近づけさせる香織。


「いや~!ちょっと待って!」


それをまるで男子が捕まえたカエルを女子に近づけた時のごとく。ピューンっと器用に後ろに下がる進藤。


「なんで!なんで避けるの?百舌鳥ちゃんの手、キレイだよ!真っ白だよ!カエル近づけてる訳じゃないのに!」


あー、やべ。香織と思考が一致した。これは良くない。よろしくない。


「べ、別にカエルなんて思ってないし!た、た、ただ……」


「うん?ただ?」


「ただ………世の中には順番ってモンがあるじゃん?」


「まぁーね。歯磨き粉つけてから歯磨きするとか電源いれてから家電使うとか。キスしたあとにセックスするとかね?あるあるたくさんあるね!」


「………うん。まぁ……最後のはよく分からないけど………」


チラッ。


チラッ、っと見るんじゃないよ。俺にマジで?みたいな顔をするな。香織に聞け。香織の中の心の中のリトルカオリに聞け。


「………んで……俺は考えてる訳。で……計算した結果………まだ早い。」


「まだ早い?」


「まだ手を繋ぐには早すぎる………」


「うん。じゃあ。進藤くんの思うボーダーラインを聞きたいんだけど?」


「ボーダーライン?」


「この日にち経ったら手を繋ぐとかハグするとか!」


「えーとな………まず、手を繋ぐのは一年半くらい付き合ってから。」


「え。」


「一年半でも早いくらいだけど………で、ハグなんて当たる面積めっちゃ多いんだから…

三年だね。三年でもまだ足りないかも……」


「え………」


うわ、あの香織が絶句しとる。

ついでに百舌鳥先輩は下をむいてる。どういう感情なんだ?


「え、じゃあキスとかセックスとかは?」


「そ、そんなモノ結婚する相手じゃないとしないよ!」


「……………」


「絶対そうでしょ。大体の男子はそうでし」


「いや、進藤くん。だいぶ………イカれてる。」


「は?」


「恋愛奥手過ぎる。」


「は?いやいや!香織ちゃんだからそう言えるんだって。出会って5秒で合体してる人だから言えるんだよ。」


「違うよ!出会って3秒だよ!」


そこの訂正は良くない?


「進藤くんがこんな恋愛こじらせくんだとは………よく告白出来たね?」


「いや、告白は俺じゃなくて………」


「私が………しました………」


「…………女の子にさせたの?」


「いやっ、違っ………俺それまで百舌鳥先輩のことあんまり知らなくて……でも美人だから……」


「顔で付き合ったんだ。中身も見ずに。軽い気持ちで?」


「いや………軽い気持ちとかじゃ………」


「軽い気持ちだから結婚までいく訳ないだろうとキスもセックスも無しですか?ほうほう。」


「いや、違っ……ちがくて……いい訳させて……」


「いい訳無用!」


そう言うと香織は進藤の左手にカシャリ、百舌鳥先輩の右手にカシャリ。ヤツをつけた。



「決めた!この場で手を繋ぐ、ハグ、キスをするまで帰さない!てかしないなら別れてもらうから!」



スゴいね………香織センセは。熱血だな。スポコンだな。

あ~………俺は久々。平和だ。

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