第59話 人生の一手は確証のないモノばかり

ただ一言そのライムの画面には

たすけて その一文字しか書いてはいなかった。


「何?何これ?」


「わ、私に聞かないでよ!」


当たり前だ。香織に聞いても分かる訳がない。だって晃太もどうしたらいいか分からない。


「アリスさんの間違えとかお遊びとかじゃ…」


ライム♪

また鳴ったライム、その画面には


おとなのらとにつはりはた た


解読不可能な文章が並んでいた。


「ねぇ!アリスがこんな変な文章書く訳ないよ!」


「……………」


確かにその通りだしいい加減認めないといけないかもしれない。

アリスさんは誰かに連れていかれた、もしくは何かの事件に巻き込まれた。それは間違いない。


「ど、ど、ど、どうしよう!どうしよう!どうしよう!どうしよう!晃太くん!」


「落ち着け。とりあえず落ち着け!」


「こんな状況で落ち着けないよ!」


その通り過ぎる。香織の言ってることが久々に正しい。


「こういう場合はまずは警察だよね!え~と!119!」


「そうじゃない!」


「117!」


「違う!」


「090526……」


「それ俺の電話番号!」


「ヤズヤヤズヤ………」


「香織マジでしっかり落ち着け!落ち着け!」


香織はこういう事態になるとパニクりまくることが今判明した。いや、誰もがパニックになるけどな。


「110だ!」


「あ!そうだった!」


「でも警察にかけてどうするんだよ?」


「え?アリスが助けてってライムを送ってきたって……」


「ただそれだけだろ?それだけの材料だけで警察は動いてくれるか?」


「そ、それは………」


別に警察をディスってる訳ではない。ただ一つのライムの文章と無茶苦茶な文章。この点だけで警察が真面目に捜索してくれるとは思えない。遊びじゃねーのか?と言われて終わる未来が見える……


「電話かけてみたか?」


「かけてるけど………ずっと繋がらない…」


「やべぇな……」


アリスさんのライムを知っているのは多分香織だけだろう。あの照れようだ。忍先輩にライムを交換してるとは思えない。

ただその肝心の香織のライムが通じない。

この時点で詰んでいる。


「どうすれば……どうしたら……どうしたら……マジで……どうするべ」



ブーーーーーーーー!!


頭がパンクしそうになりそうな晃太と必死に電話をかける中で大音量のブザーが流れる。


「「え?」」


そのブザーの場所、出ているところは……


「忍先輩?」


ブザーが鳴った携帯を手にし……

忍先輩はさっき買ったバットとボールを一度握りしめテラスから走り出した。


「え?な、な、何?今の?今のどうした…」


「追いかけよう!」


「へ?」


「忍先輩を追いかけよう!」


「は?何で?」


「忍先輩も何かを感じとったんだよ!だから!私たちも行くよ!」


「ちょ、ちょ、ちょっと……待て。

くそ……ちょっと待てよ!香織!」


忍先輩の後をダッシュで走る香織を前に晃太はまだまだ理解できないが走るしか足を動かすしか出来なかった。

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