第29話 暗黒 ※苦情はすべて香織にぶつけてください。

「さっ!コーラも準備オッケーだしっ!ゴクッ!」


「何で一回飲んだ?」


「毒味?」


「毒なんか入ってる訳ねーだろ。」


飲みたいだけなら飲みたいと言えばいいだけの話なのに…………


「じゃああーんしていくよぉ?」


「自分で食いたいんだけ」


「却下。否認。断固。」


「断固なんだよ。」


箸を自分の手に持ちがっちりと離さない香織

それはまるで岩の如く鋼の如く動かない石像が如く…………


「あ~もういいっすわ。大丈夫。大丈夫。あーんでいいわ。」


「それでヨシッ!」


「ヨシッ!じゃねーし。」


無理矢理やっといてニコっじゃねーよ?ふざけんなよ?


「じゃあ私があーんで口に運んでいくからね?何から食べたい?」


「別になんでも………」


「何でもって言葉が嫁を家族を困らすんだよ?その一言で作るモノのレパートリーが断然と膨らむんだから。無駄に。それが世の男性人達の悪い癖………」


「あ~!じゃあお前が今一番食べてほしいモノを食べさせてくれ!」


「それならハンバーグだよ!」


「ハンバーグ?じゃあそれで………」


「じゃあ口開けて?」


「いやちょっと待て。何で一個丸ごと一気に入れようとしてんの?」


「一気に入れたいから。」


「理由になってないから」


「口に入れば分かる。」


「ふざけんな。そんな一気に食えるか……」


「あーん…………」


「ふざけ………んがっ!


一気に食える訳ないと拒否してたのに無理矢理口に突っ込んできた。


「んが…………………………。」


無理矢理口に入れられたハンバーグを何とか咀嚼しながら味を確かめる。


「………………普通に旨いけど………」


「けど?何?」


「お前これ………何?普通のハンバーグか?何かネバネバしてる………し。」


ニヤっと笑う彼女は嬉しそうに話す。


「隠し味だよ?」


「隠し味ってか……チーズだろ?チーズじゃねーとこんなネバネバ」


「私からもネバネバしたモノ出るよ?」


「は?」


「私からもネバネバしたモノ……出るよ?」


変な汗が流れてくる…………


「あはは…………何言って…………」


「それを私は愛蜜と呼ぶ。愛蜜をハンバーグの中に大量にいれて………私の気持ちを詰め込んで………」


「うっっえっっっっっ!!!」


吐きそうになりながらも何故かミネラルウォーターを飲むという矛盾行為をする。


「お前…………マジで何してんだ…………」


「まだまだ………まだまだ……たくさんあるよ?

私の髪の毛入れのスパゲッティ、私の血が入ったグラタン……私の汗と涙が入った海老フライ………

まだまだまだまだたくさんあるんだから……?」


「ヒッ!」


とりあえず逃げの態勢をとる。

逃げるしかない。逃げるしかない。

その前に…………もうミネラルウォーターはない。コーラを飲みたい………まだまだ気持ちが悪いから…………

彼女の一瞬の隙を見てコーラを飲む。

ゴクッ!


「ヨシッ!いくしかない!逃げよ…………」


口の中の気持ち悪さをとるためにコーラを飲んだのに…………飲んだ………のに…………


「体が動かない…………てか目が………重い………」


ドカッと倒れた晃太。その後の記憶は何もない。

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