第28話 嵐の前のお弁当

その後はもう勢いだけだった。


香織はラブソングにメンヘラ、ヤンデレチックな歌を好んで歌い

晃太はその空気を何とか変えようとロックだのアニソンだのK-POPだの多種多様な音楽を歌いまくった。

すると時間は………


「あ、もう14時30分だよ?4時間くらい歌ってたんだね?」


4時間も連チャンで歌っていたみたいだ。

ドリンクバーにいく暇もなくカラカラになった喉はカラカラアンドがらがらであった。


「よじかんも、うたったらまんぞくだろ?」


「満足!満足!」


「なんでこえかれてないんだよ?」


「私喉強いから!セックスの時も声枯れなかったでしょ?」


「でしょ?ってしらないけど………」


「晃太くんは今みたいにガラガラだったけ」


「うっさい!」




「ぷはっ」


自販機で買ったミネラルウォーターで喉の痛みを消す。


「楽しかったね!」


「楽しいのかどうか分かんないけどな?」


「そこは楽しいでいいんだよ!」


「嘘はつけねーし。」


「そーゆーところも好きだよ!」


「あっ、そーですか。」


「さて。」


場所は公園。目の前にはマンションやホテルがあるなかパチンと手を叩く香織。


「もうお昼も過ぎたしご飯の時間だね?」


「いや、いらな」


「だってカラオケ始まる前からあんなに食べたがってたんだもん?それから4時間経ってるし4時間歌いまくった後だしもうお腹ペコペコでしょ?」


「いや?逆に?腹減りすぎてもうお腹いっぱいになってるから。そんな現象だから。うん。だから弁当はべつに。」


「いいって、いいって!そんな遠慮しなくていいって!」


「遠慮してないし!」


「遠慮しないでもお弁当は逃げないよ?」


「最悪逃げてくれてもいいんだよ?」


「とりあえずお弁当の蓋開けるね?」


「話聞いてた?俺はお腹空いてな」


「おーぷん!」


パカッと開けるお弁当の中にはたこさんウインナー、スパゲッティ、グラタン、ハンバーグ、海老フライ、等々さまざまなおかずと白ご飯にゴマと梅干しがのった日の丸になっていた。


「……………」


「どう?」


キャピっとした姿を見せる彼女。


「これ、朝作ってたのか?そんな時間あったか?」


「いや?昨日の夜、お父さんと晃太くんが話し合いしてる時に作ってた!朝はそんな時間はなかったし?」


作り置きか………にしても………いいたくないが完成度が高い。手っ取り早く言えば旨そう。なーんて一言でも言ったら舞い上がる可能性があるから言わないけど………


「美味しそうでしょ?」


「ま、まぁ………いいんじゃね?」


「そうでしょ?あ、そうだ!晃太くんが90点とったご褒美、あーんで食べさせてあげるにするね!」


「それ俺にプラスじゃなくてお前にプラスじゃねーの?」


「あ、あとコーラ買いに行かなきゃ!」


「何で?」


「え?だって日清はコーラは最強説を提唱してたじゃん?」


「それはCMのなかでの話だろ?現実に持ってく」


「買ってくるね!待ってて!」


「ちょ………てか俺まだミネラルウォーターあるんだけど?」


話を聞かないヤツだわ。マジで。

でもお弁当は………大丈夫そうだな?




とこのときは思っていた。あんなイカれた弁当だなんて思っていなかった。


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