第26話 替え歌で高得点取るのは難しい

「お時間どうされますか?」


「え~と………」

「フリーでフリーフリーフリーで!」


「あ、は、はい………分かりました。ではフリーでドリンクバーつきで良かったでしょうか?」


「うん!あ、あとこれ!学生証!学割使わしてね?」


「ちゃっかりしてんな………」



「お~結構広い部屋じゃん!」


「普通サイズだと思うぞ?」


「あ~、そっか!晃太くんはよく一人カラオケ行くもんね?」


「何で知ってる?」


「よく言うこともあるし尾行したこともあるし」


「ストーカーめ。」


「尾行だってば。尾行。接触してないんだから害はないでしょ?」


「害はなくても気持ち悪いだろうが!」


「え、だって一人カラオケの邪魔したら悪いかな?って………一人で歌いたいんでしょ?」


「変なところで気をまわすな!」


始まる前から疲れてきた。フリーにしたの間違いだったかも。


「え~、何歌う?どっちが先に歌う?」


「その前になんか食べ物注文しようぜ?なんか摘まみた」


「だめ」


メニューの紙を取ろうとする晃太の手を叩く香織。


「いて。なんだよ?なんで食い物ダメなんだよ?」


「ダメ。」


「なんで?」


「……………晃太くんお腹いっぱいにしようとしてるでしょ?」


「………うな訳ないじゃん?」


「だったらさっきお腹空いてるならお弁当を選んだはずじゃん?」


「そ、それは……………ポテトくらいはいいだろ?」


「ダメ。ポテトも私のお弁当に入ってるから。」


「……………いや、普通にフリーで歌うならなんか摘まみながらやったほうが面白いじゃ」


「カラオケは歌う場所。寿司屋は寿司食う場所。そう決まってるでしょ?」


「そ、そんなき、決めつけ…………」


「しっかりお腹空かしてほしいからね?万全の状態で食べてほしいからね!だからダメ!食べるから私があなたを食べる。性的に。」


「考えがクレイジーだから。」


ともかく食べ物は禁止らしい………

どんだけ弁当に対する執着が強いんだよ……

もうすでにコエーよ。その弁当。


「分かったよ………食わない。なら歌うから。何を歌う?」


「ちょっと待って!晃太くん!」


「なんだよ?」


「私。めっちゃいいこと思い付いた!」


「なんだよ?」


「私歌そんな上手くないでしょ?」


「知らないけど………あんま聞かないし。」


「音楽も3だし。」


「俺もそうだとしたら3だけど?」


「だから………勝負しよ!もし私が90点出せたら………晃太くんからご褒美頂戴?」


「ご褒美?なんじゃそれ?」


「例えばラブソングの歌詞を私に変えて歌うとか!」


「うわぁ………地味に嫌だ………」


「まぁあとは性的なプレゼントですよね!」


「場所を考えろ。あそこに防犯カメラがあんだよ。」


「防犯カメラを超えてこその愛だよ。」


「愛じゃねーよ。狂気だよ。うんなもん。」


「ともかく私が今から歌うから、それを聞いて待ってて。点数が90超えたら拍手だからね?」


「別に俺にとってめでたくないから拍手じゃなくてよくないか?」


「気分的にノルから拍手してね?」


「のらしたらダメ何じゃないのか?」


「う~ん………よしっ!これにしよ!」


ピッ。っとデンモクを押し出てきた文字は…

毒………?何だこれ?聞いたことないなぁ…

一回聞いてみるか………

一回……


あっち向いてホイでそのまま 人差し指で君の目を突くんだ~


じゃんけんぽいで握りしめた拳で君の顔をぶん殴る~


こんな気持ちいい事は他にはないでしょう~


こんなことして許されると思って僕です~


どっちが正しいかなんてさほら僕が正義に決まってるじゃない?


ん?なんだこの歌詞………何かヤバく……



あの子の全ては僕のもの


キスをしたり添い寝をしたりその先だって


誰もそれを切り裂けないの


君を犯すためなら法だって犯せるから~



……………………………


「点数!90!90こい!」


画面に映し出される点数は……91.52


「やった~!90達成だよ!達成だよ!達成だよ!誉めて!誉めて伸びるタイプだから私!」


「イヤちょっと待て。」


「え?今さら90点のノルマクリアの商品は無しとかはないよ?」


「いや、ちがくて…………何だ………今の歌詞………」


「いい歌でしょ?大好きな歌なんだ!」


「お前………本心入ってないよな?」


「何言ってるの?8割本心だよ!」


「……………もうそれなら10割本心のほうがいいわ。」


「あとこのウェーブに乗ってもう一プレゼント欲しいな!よしっ!じゃあこれにしよ!」


「お前………大丈夫だよな?変な歌詞じゃ…」


「違うよ!バンドの歌だよ!激しいよ?」


「ほんとか?ならいいけど………」


もうそれがフリになってるようにしか見えないんだよな…………


画面に映されたのは共……あ、このバンドは知ってる。なら大丈夫か。世に知れてるバンドなら大丈夫だろ…………


愛してるわ ねぇダーリン

あなたに出会えて幸せなの

永久に二人の時間が続きますように

泣いた顔 笑顔も全部 世界で一つの宝物よ


お、なんだ普通にいい歌………リズムもいいし………


でもお願い聞かせて

私じゃない香りがしてるわ


ん?なんか雲行きが………



セックスした時の事は もう忘れよう とそう言うけど取り繕うたびに視線は泳いでる

無意識に舌をだして誤魔化す癖も嫌いじゃないの

誰にも渡さないわ

私だけってそう言って


何回だってキスしてそっと優しくなぞって

何十回とキスして もっと強く噛み締めて

何百回とキスしてずっと2人で溺れて

何千回とキスして

まだ足りないじゃない


ちょっと待て。これもやば………


夢の中であなたの影を抱いてもいいですか?

私法第6条 浮気は死して償うべし

携帯の画面に映る人は誰?

夢の中であなたを殺してしまいたい。


ヒッ



「点数!点数出るよ!どうかな?どうかな?

ドン!あ、90.21だ!ギリギリ!やった~!プレゼント二個ゲットN…」


「一旦お話しようか……香織さんや。」









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