第22話 スマホより呼びかけだ。呼びかけだ。

「で。どこで買う訳?」


「えー………宝石屋さん!」


「宝石屋さんはどこにあるの?」


「知らない!」


気持ちいいくらいのハッキリとした言葉。


「調べてこいよ。せめてお前は?」


「お前はって私たち2人の問題だよ?2人のマリッジリングだよ?」


「マリッジリングじゃねーし。お前が勝手に設定したハードルだから。ふざけんなよ?」


何俺もこのペアリング事件の犯人みたいになってんの?

被害者なんすけど。


「けど困った困った。これじゃ見つけられないね?」


「…………はぁ………分かったよ。面倒くさいけど………俺がスマホで」




「すいませ~~~ん」


その声は晃太の右から左に一気に突き抜けていった。


「この辺にぃ~!マリッジリング買える場所知ってるひと~?誰かいませんか~?いたら教えてくださ~い!教えてくださ~い!教えてくださ~痛いっ!!何すんの?晃太く」


「お前が何してんだ!」


「何って人に聞いてる。尋ねてる。尋ねてるよ?」


「なんでそんなことすんだよ?」


「そりゃあ頼るべきは人の知恵だから!人の知恵を大事にするべきだか」


「今の時代はコンピューター、ITの世界なんだよ!誰が今さらそんな原始的なやり方しろっ!って言ったよ?」


「言われてないけど独断で!」


「お前の独断禁止!お前の独断は無茶苦茶だから。」


「え~?」


「ともかくスマホで調べるから、お前は黙って座ってお」


「お二人様?お二人様?ちょっといいかしら?」


「え?」


晃太がスマホから目を離し少し上に目を向けると………そこには淑女がいた。70代くらいだろうか?だが何だかオーラがあって綺麗な人だと思った。それが第一印象だった。


「男女の指輪を探しているのね?なら、あそこの角を曲がった先にある PLANET ってお店がおすすめよ?」


「え?おばちゃんもそこで買ったの?」


「えぇ。何十年も前だけどね?店主もいい人で若い2人でも買える値段のモノもあるわよ?」


「おばちゃん。大丈夫!私たちもう40万以上持ってきてるから!めっちゃいいモノ買えるよ!」


「へぇ…………高校生くらいに見えたけど意外と上の年齢なのかしら?」


「いや!高校生だよ!百合咲高校の2年の沢 香織とは私のこと」


「もういいだろ!どんだけ喋ってどんだけプライバシー晒してんだよ?」


「服掴むのやめてよぉ?服伸びるじゃん?ラーメンみたいに?」


「その伸びるとは意味合いが違う。けどもういいわ。ともかく…………」


ペコリと頭を淑女に下げる晃太。


「情報ありがとうございました。そこに一度行ってみます。ありがとうございます。」


「ありがとねー!おばちゃん!」


「いえいえ。では………」


「あ、ちょっと待って!おばちゃん!名前聞きたい!名前!」


「行くぞ?そんな人のプライバシーバシバシ聞くなよ。行くぞ?」


「あ、ちょっと待ってよぉ!」


ふいに後ろを振り向くと淑女が口を開いていた。


名前の中にゆり が入ることは分かった。

口の形で。


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