第20話 父と会議と死のリミット

時間というのは残酷である。すぐに進み、進んで欲しくない時にすぐ進んでいるような感覚に陥る。

そして………

21時。


「晃太くん!あの事言っといてね?じゃあ後で!」

「晃太くん……………死なないでね………」


両極端な2つの言葉を聞きなから………

ドシンっと座る大五郎さんの前にある椅子に座る。


晃太の目の前には麦茶、大五郎さんの前にはビールが………ビールと麦茶?………一応似ている2つを用意したのかな?…なんて聞ける訳ないけど。


「乾杯しよう。」


「は、は、はい。」


「乾杯。」


「乾杯………」


そう言って乾杯をした大五郎さんはまるで大蛇が如くビールの缶を開けまくり………一気にテーブルの上にはビールの空き缶が………10以上置かれていた。


あ、俺これ殺されるな………


その様子を見て晃太はそう感じた。

だが10缶飲んでも彼の様子に変化はない。

というか赤くもない。化物かな?


「晃太くん。」


「あ、は、は、は、はい!」


急な呼び掛けに背筋がビクッとなる。


「さっきのことも聞きたいが色々聞きたいが………まず1つ…………もう赤ちゃんはできるのか?」


「え?」


「妻から聞いた。香織が無理矢理薬をもって二回目の性行為をしたことを。しかも赤ちゃんが出来やすくする薬を飲んでしたことも。」


「…………………」


伝えといてね?じゃなくてもう伝わってるじゃん?あの………おばはん………



「まず1つ詫びはいれたい。娘が大変なことをしたのは理解している。だが、娘も悪いが君も悪いと私は思う。」


「な、何故………」


「自分の部屋に易々と娘をいれたことだ。こんなことも想像できるだろう?」


「言わせていただきますが…想像………できる訳ありませんよ?」


誰が人の部屋に入って薬をつかって逆レ○プされることまで予測されねばならないのだ。意味わからない。


「だから君にも罰がある。そこは理解しているな?」


「え、え………あ、あ………」


眼力に負けて何も言えない。


「私が知りたいのはこれからのことだ。」


また大五郎さんは缶を開ける。さっきまでの間にまた10本くらい空いてるし………嘘でしょ?マジック?


「君は香織と結婚するのかい?」


「け、結婚………?」


「段々と道が細くなり選択肢が減っているのが分かるだろ?君が香織のことを親友として好きなのは理解している。だがもうそれも遅い話だ。もう親友には戻れない。そして前にも言ったはずだが………娘をもし誰かにやるくらいなら君、晃太くんがいいと最初から決めていた。だから…………ここで宣言してほしい。」


「宣言?」


「香織と付き合いそして結婚し子供を産ませ一緒に家庭を開くか、ここで君自体が私に惨殺されるか。どちらかを選んで………」


「それ実質一択ですよね?」


「惨殺を選ぶのかい?」


「逆ですよ!まだ生きていたいですから!」


何故自ら死ににいかないといけない。


「その二択だけですか?」


「二択だけだな。」


「あの……包丁を探し始めるのやめてもらえます?」


「万が一にな。」


「殺人をすることになりますよ?」


「それくらい私も追い込まれているんだよ。」


「分かりますよ!分かりますよ!その気持ち!けど……」


いくら何でも殺人は…………


「さぁ………どうする?君はどちらをと」


「ちょっと待ってください!」


「なんだ?」


「あの………猶予をください。」


「猶予?」


「はい。明日ペアリングを買いにいく、と香織が言ってるんです。だから………そのペアリングを買いにいく明日の間中にその答えを決めます。」


「決めれるんだな?ただの先伸ばしじゃないだろうな?」


「まぁ………先伸ばしにも見えますけど……とりあえず今すぐは無理です。そんな簡単に決められません。だから………明日。明日まで待ってください。お願いします。」


頭に缶ビールが1つ投げられる。


「ひよっこが。明日に絶対に決めろよ?じゃないとぶち殺すからな?」


そう言って最後のビールを飲み干し部屋から出ていく大五郎さん。

自然と土下座になっていた体を戻しながら…溜め息をつく。


「明日…………地球爆発しないかな?」

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