第19話 生き地獄に変わる風呂

「晃太くん!晃太くん!」


「あ?なんだよ?」


「これがうちのお風呂だよ!」


「あぁ。」


「長い付き合いだけどここには来たことなかったでしょ?」


「あるわけねーだろ。異性の壁があるんだよ!」


「異性の壁をとり壊してでも仲良いのが私たちでしょ?」


「その壁を一方的にぶっ壊したのはどこのどいつだろうな?」


「は~い!」


元気に手を上げるコイツがムカつく。殴りたい。殴りたい。ボコボコにしたい。


「てか晃太くんさぁ?」


「あ?」


「なんで腰にタオル巻いてるの?」


「巻きたいから巻いてるんだけど?」


「巻かなくてもいいじゃん?私たちはもう全てを見た仲なんだから!」


「あ~、うるさい。さっさと洗ってでるぞ。」


「あ、晃太くん?」


「なんだよ?何回も何回も?」


晃太がシャンプーに手を伸ばそうとした時、彼女の声がそれを制止した。


「頭洗うの?」


「洗うよ?」


「じゃあ!私が洗ってあげるよ!」


「却下。別にい」


無視してシャンプーをプッシュしようとする晃太の首を無理矢理上に持ち上げる香織。そこには二個の饅頭が………でけぇ………でも興奮したら負けだから何とか耐える。


「そんな意地張らないで!私が洗ってあげるから!大丈夫だから!」


「誰も意地張ってねーよ!自分のことは自分で………」


「大丈夫、大丈夫。分かるよ。大丈夫だから。私に任せて?私に洗わせて!」


「……………」


コイツに人間の言語は通じないのか?

はぁ………と溜め息をつき


「もういいわ。思うままにどうぞ?」


と頭を差し出す。


「うん!意地張らずに初めからそうすれば良かったんだよ!」


「意地張ってねーんだけどな?」


「よし!じゃあ洗ってあげるね?」


そう優しい声で囁く彼女は晃太の髪をゆっくりと手櫛でといでいく。

………………残念というか腹立つことに、頭を洗われていることがとても気持ちが良かった。腹立つが………ちょっとリラックス出来ている自分が腹がたった。


「どうですかぁ?」


「どうも何も………普通………だから」


「普通………へぇ~?」


何かニヤニヤしているのが分かる。何か言いたそうだが今は無視しよう。


頭を洗われた晃太は思いたくないがスッキリしていた。


「あー、もうありがとな。とりあえずこれでもういいから。体洗うから。」


「体も洗うよ!」


「は?」


「体も洗うよ!」


ドサッ。っと押し込まれ倒れた前には笑顔の彼女がそして彼女の体には何故か泡がたくさん………


「ちょっと待て………」


「理解が早くて助かる。そうだよ!私がタオルとなって洗ってあげるから!」


「ふざけんな!離せ!」


そんな彼の抵抗も虚しくピタリと引っ付く彼女。泡まみれだが凹凸もあって柔らかくて……


「お前……いい加減にしろよ!」


「ラブラブエッチした後なんだし。大丈夫でしょ?」


「ふざけんな!離れろ!」


「離れろとかいって息子さんは元気に立派ですよ?」


「お前………マジで………」


一発殴ろう。そう思った時だった。




「大五郎さん!そっちは!」



ガタン!



香織の母親の慌てた声とともに開くお風呂の扉………そこには………


「だ、だ、大五郎さ、さ、さん………」


「あ、おとーさん!」


泡だらけで2人で引っ付く晃太と香織の姿を無の表情で見る大五郎さん…………


数秒間。時が止まる感覚に陥る。


「晃太くん。」


「は、は、はい!」


とてつもなく低い声で大五郎さんは晃太を呼ぶ。


「後で21時頃2人ではなそうか。」


「へ?」


「その時に全てを吐き出すよ。」


そう言って扉を閉めた。


「………………」


「おとーさん、これについて何も言わないってことは理解してくれたのかな?」


「違うだろ!あまりに情報量多すぎてパンクしてるんだよ!」


9時?9時?9時?21時?マジか。

それが晃太の命日の時間になるのかな?

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